シェイクスピアから脳を紐解く
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
お客様とのコミュニケーション誌「ぶーめらん」のWebサイトでは、Web限定シリーズ「世界のパートナーと共に」を公開しています! 世界各地で課題と向き合う人々のユニークな取り組みや、それにかける思いをお届けしています。
この中から、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者を特集した「シェイクスピアは脳科学の夢を見るか?」をご紹介します。
シェイクスピア劇を利用したユニークなアプローチ
英国のロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン認知神経科学研究所のAntonia Hamilton教授と、同医学物理学・生物工学部のIlias Tachtsidis博士の研究はとてもユニークです。
彼らは、当社の研究用ポータブル光脳機能イメージング装置「LIGHTNIRS」を俳優の頭部に装着し、舞台上でシェイクスピア劇を演じている時の脳信号を計測しています。
「LIGHTNIRS」を装着した状態で演じる俳優
人間の社会的認知のメカニズム、さらには、自閉症スペクトラム障害を持つ人たちとの違いについて、新たな科学的知見を得ることを目的としています。
研究の先にあるもの
Hamilton教授は、演技をする俳優が同じ行動を繰り返す能力に優れることを活用し、特定のやりとりにおける脳活動を記録することで、ソーシャルスキル(社会技能)に課題を抱えた人々の脳に共通するパターンを特定したいと考えています。
「自閉症の子供たちがより安心して他者と交流できるようになるための行動療法の発見に貢献したい」と目標を掲げます。
Tachtsidis博士(左)とHamilton教授(右)
■ インタビュー記事「シェイクスピアは脳科学の夢を見るか?」全文を読むにはこちら
※ 本記事内における人物の所属団体および肩書等の情報は、インタビューを実施した2019年5月時点のものです。
研究用ポータブル光脳機能イメージング装置「LIGHTNIRS」とは
脳の機能や活性を計測し、画像化する技術を「脳機能イメージング」といいます。光機能イメージング装置は、近赤外光を頭部に照射し、生体内で散乱・吸収されながら反射される光の一部を検出することで、脳表面の活動状態をリアルタイムに可視化する装置です。
安全かつ自然な状態で脳の活動状態を測定でき、発達心理学や教育学、認知科学などの分野で使用されます。
「LIGHTNIRS」は小サイズ、軽量の携帯型装置で、自由度の高い計測が可能です。ノイズが少なく安定したデータを取得できることも特長です。こうした利点が、今回のロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究において、舞台上の俳優の脳活動を計測する土台となりました。
舞台上でのフレキシブルな計測を可能に
■「SHIMADZU TODAY」では、過去に、光脳機能イメージング装置の開発に携わる若手社員の仕事内容や“理科や科学への興味を深めるきっかけになった1冊”を紹介しました。
※「LIGHTNIRS」は、研究用ポータブル光脳機能イメージング装置です。研究用途にのみ使用可能です。医薬品医療機器等法に基づく医療機器として承認・認証等を受けた機器ではありませんので、治療診断目的にはご使用になれません。
取材した当社の担当者から
「ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンは、1826年設立と大変長い歴史を誇る大学です(島津製作所の創業は1875年)。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンは古くから日本とも関係があり、あの夏目漱石も留学したそうです。初めてこの話を欧州の担当者から聞いた時、シェイクスピア劇という単語と当社の科学機器がどのようにつながるのかイメージが湧きませんでしたが、そのように日本とゆかりのある大学研究者のユニークな取り組みを取材できたのはとても貴重な経験でした。」