インバータ冷却機構のX線CTによる検査・観察
モビリティの電動化と高効率化

モビリティの電動化に関連して車載インバータの小型・高密度実装化が進んでいます。それに伴い、発熱部品であるインバータのIGBTチップの放熱のために冷却機構の改善も進められています。例えば、電子基板から放熱板への効率的な熱伝導機能の付与、冷却配管の配置による水冷機能の付与、冷却効率向上のための冷却フィン形状最適化等がその方法として開発されています。こうした、複雑化した冷却機構の内部形状観察、寸法測定の方法としてX線CTをご紹介します。

モビリティの電動化にともなう熱マネジメントの課題

モビリティの電動化が進展しつつあり、小型EVの開発、航続距離の伸長のニーズが高まっています。電動車は直流電流(蓄電池)を交流電流に変換し、周波数や電力を調整しモーターの回転数やトルクを制御し加減速を行いますが、その電力を変換し制御するのがインバータ―です。狭い車載スペースに合わせるため、他の車載部品と同様にインバータも小型化が求められています。一方で車載インバータには、電動車の走行性の向上のため高出力化が求められており、高電圧・大電流化による発熱量の増大は、様々な不具合の要因となります。小型化による熱抵抗の増大も相まって、インバータの冷却・放熱性の向上が課題になっています。

車載インバータは熱膨張係数の異なる素材が組み合わさった中で温度変化が繰り返されるため、適切に放熱し熱対策を行わなければ、熱疲労によるパワーモジュールのワイヤ接合部の断線やはんだクラック発生の要因となり、インバータの故障へとつながります。そのため、インバータの信頼性確保には冷却機構実装による熱マネジメントが欠かせません。

インバータ自体の小型化が求められる中で、十分な放熱性を保つために、冷却機構の形状は複雑化しています。また、発熱部から冷却機構への効率的な熱伝導には密着性が重要になります。そのため、冷却部の接合部評価や、複雑化する冷却機構の正確な寸法測定が必要になっています。

放熱性の最大化のカギとなる密着性(接合部評価)を可視化するX線CTとは

そこで、X線CTによる観察が有用と考えらます。X線CTであれば外観検査では見えない・測れなかった部位の検査や寸法測定が可能になります。

  • 【図1 島津製作所のX線CT装置 inspeXio SMX-225CT FPD HR Plus】

X線CTのCTとはComputed Tomography の略称で、物体を走査(スキャン)して全周方向から得たX線投影データを基に画像を再構成することで断面画像(トモグラム)を得る技術です。X線CTを用いることで、観察対象を破壊することなくその内部の状態を観察することが可能です。

X線CTによる観察事例

(1)はんだ接合面のボイド観察

放熱板(ヒートシンク)との接合部にはんだが使われている構造の場合、はんだ接合面にボイド(空隙)が発生する可能性があり、その検査のためにX線CTが利用されます。はんだボイドがあると熱伝導に悪影響を及ぼし、冷却性能が落ちてしまうためです。

  • 【図2 インバータ パワーモジュールでのはんだ付け箇所とボイド観察のイメージ】

(2)立体複雑形状の正確な寸法・角度測定

限られたスペースの中で放熱性を高めるために冷却機構の立体・積層構造化が進んでいます。そうした冷却機構には効率よく伝熱するための密着性を確保するため、形状(寸法、角度)の正確性が求められます。形状が複雑なため、接触式の三次元座標測定器(CMM)では寸法測定が困難ですが、X線CTを使用することで、複雑な内外形状であっても簡単に寸法測定が可能です。

  • 【図3 立体複雑構造の冷却機構の寸法測定イメージ】

モビリティの電動化に向けて

脱炭素社会の実現に向けて、今後モビリティの電動化はますます進むものと予想されます。それに伴う高電圧化、大電流化による電子部品の発熱と、それを限られたスペースで冷却・放熱性する要求は今後も続くと思われます。島津製作所は内部観察・計測の技術でモビリティの電動化と脱炭素社会の実現に貢献いたします。