For Your Winning!
コラム

2020.7.16

TRAINING

SHARE

クールダウンの習慣で怪我なく運動を継続しよう!
~次の日に疲労を残さないための静的ストレッチ~

運動した次の日に、「体が疲れて安定したパフォーマンスが出せない」「体が重い」などと感じた経験はありませんか?激しく動いた翌日は疲れが残りがちですよね。

私自身、学生時代からテニスを本格的に続ける中で、クールダウンを基礎から学び、目的や方法ついて理解を深めました。おかげで現在まで大きな怪我はなく、テニスを続けることができています。今回は私の経験も交えながら、クールダウンと静的ストレッチについてご紹介していきます。

ここで紹介するトレーニング方法や器具などによる効果は選手個人の感想です。
選手たちは日頃からトレーニングを積んでいます。
お試しになる場合は、自分の身体の具合に合わせて緩やかに行うことをおすすめします。

1. クールダウンの目的や効果

試合後や練習後にジョギングやストレッチをするアスリートの姿を見たことはありませんか?クールダウンの目的は、疲労を残さないようにすることです。激しい運動の後にクールダウンで体をケアしなければ、疲労が蓄積して筋肉が固くなり、筋肉痛や怪我のリスクが高まります。

運動とセットで十分なクールダウンを行うと怪我を予防でき、稼働した筋肉を緩めて可動域の柔軟性を高めることができます。翌日のコンディショニング、怪我をしにくい強い体作りに繋がります。

2. 静的ストレッチ(スタティックストレッチ)とは

クールダウンの一つの手段として静的ストレッチ(スタティックストレッチ)が有効です。一般的に「ストレッチ」と言われて想像するのがこのストレッチです。今までに一度はやったことがあるという方も多いと思います。

静的ストレッチ(スタティックストレッチ)は、反動や弾みをつけずに筋肉をゆっくりと伸ばし、伸展した状態を維持するストレッチです。時間をかけて筋肉の最大可動域をゆっくりと伸ばしていくので、柔軟性のアップや可動域を広げる効果があります。筋肉痛になりにくいことも特徴です。

運動を始める前のストレッチは動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)がおすすめです。
動的ストレッチについては押野選手のコラム「どうウォーミングアップすればいいの?②~股関節の動的ストレッチ編~」をご覧ください。

3. クールダウンメニューと解説

私が普段行っているクールダウンのメニューです。

1. ジョギング(5~10分)

呼吸が乱れない速さで行います。呼吸が落ち着いてきたら、ウォーキングに切り替えることもあります。

2. 静的ストレッチ(30秒~自分が気持ち良いと感じるまで)

運動で使った筋肉をゆっくり伸ばします。ポイントが4点あります。

  1. ・ 反動をつけない:ゆっくり筋肉を引き伸ばして静止することが大事です。
  2. ・ 痛みが出るところまで伸ばさない:痛みを感じるのは伸ばし過ぎの証拠です。各部位30秒~自分が気持ち良いと感じる時間で行います。
  3. ・ 呼吸を止めない:呼吸を止めてしまうと、体がリラックスできず筋肉を緩めることができません。ゆっくりと呼吸を続けながら、リラックスした状態でストレッチを行うように心がけます。
  4. ・ 運動終了後、体が冷めないうちにすぐに行う:ジョギングで体が温まった状態でストレッチを行うことで筋肉が緩み、伸ばしやすくなります。

■ 静的ストレッチのメニュー

* 腹筋

  1. ①四つ這いの姿勢からお腹を前の方に垂らす。
  2. ②お腹の力を抜いて、突き出すような感じでキープする。
    腰を反ると痛みが出る場合は、肘をついた姿勢で行う。左右の肩甲骨を締めるように胸を張る。

* 広背筋

  1. ①床に膝をつき、足の親指を合わせ、かかとの上に座るように体勢を下ろす。
  2. ②膝を広げて、腰から前方に倒れる。腕を伸ばした状態で胸を地面に近づける。
    目線を少し上げて顎から地面に近づけるイメージ。おでこから地面に近づけると背中が曲がり、広背筋が伸びにくくなる。
腹筋

腹筋

広背筋

広背筋

* 腰

  1. ①仰向けで寝て、足を頭の後ろへ持ってくる。
    腰が固い人は、爪先を地面に近づけようとすると首に体重が乗ることが多いので、伸びているのを感じるところまで行う。

* お尻

  1. ①膝を立てた仰向けの状態から、片足の足首を反対側の太腿にかける。
  2. ②立てている方の脚を両手で抱え、自分の方に引き寄せる。
    足を組むのが難しい場合は、足を組まずに足首を胸に抱える。
腰

お尻

お尻

* お尻・腰

  1. ①仰向けになり、片膝を直角に曲げて体の横に脚がくるように腰を捻る。
  2. ②手で曲げた膝を押さえ、腰を捻った状態で保持する。
    地面から肩が浮かないように注意する。

* 腿の裏

  1. ①仰向けの状態から、膝を伸ばしたまま片足を上げる。
  2. ②腿裏を両手で抱え、息を吐きながらゆっくり胸の方へ脚を引き寄せる。
    爪先の向きに注意しながら、下げている脚の膝が曲がらないようにする。
お尻・腰

お尻・腰

腿の裏

腿の裏

* 股関節周り①(主に股関節全体)

  1. ①片足を曲げてそのまま前屈する。
    へそを地面に近づけるイメージで、骨盤を立てて行う。

* 股関節周り・脚の裏側・腰

  1. ①左右開脚の状態で上体を前に倒す。
股関節周り①

股関節周り①

股関節周り・脚の裏側・腰

股関節周り・脚の裏側・腰

* 股関節・腰・背中

  1. ①背筋を伸ばし足の裏を合わせ、体を引き寄せる。
  2. ②上体を前に倒す。

* 股関節周り②(主に後ろ脚の股関節付け根)

  1. ①脚を前後に開いて前足は直角、後ろ足はなるべく遠くに置き、爪先を立てる。
    片手を足の下に入れ、体を立てる。
股関節・腰・背中

股関節・腰・背中

股関節周り②

股関節周り②

* アキレス腱

  1. ①正座をしてから片方の膝を立てる。
  2. ②かかとが浮かないようにして、立てた片足の前側に重心を乗せる。

* ふくらはぎ

  1. ①足を前後に開く。
    かかとが浮かないように注意し、後ろの爪先を体の正面に向けるように意識する。
アキレス腱

アキレス腱

ふくらはぎ

ふくらはぎ

* 手首・足首

  1. ①左右よく回します。
手首・足首

手首・足首

4. まとめ

今回は、私が実際に行っているクールダウンのメニューをご紹介しました。軽めのジョギングと静的ストレッチ(スタティックストレッチ)という至ってシンプルなものなので、誰でも簡単にできます。楽しく安全にスポーツを続けられるように、皆さんぜひ試してみてください!

5. Breakersを指導するトレーナー・
横山正吾さんからのアドバイス

テニス選手に関わらず、スポーツ選手は練習や試合の後に軽いジョギングやストレッチングなどのクールダウンを行っています。

クールダウンの効果として、まず疲れに関わる疲労物質を素早く取り除くことが挙げられます。運動によって筋肉中には乳酸や二酸化炭素、アンモニアなどの疲労物質が産生されます。代表的な疲労物質として知られている乳酸は、激しい運動によって産生され、それに伴って水素イオンが作り出されます。水素イオンの蓄積により筋肉が酸性に傾き、筋肉の収縮力が抑制され能力を低下させてしまうのです。乳酸は間接的に筋肉の疲労に関わっており、早期に除去しなければならない物質です。乳酸の除去にかかる時間は、安静時に比べ、ジョギングやストレッチなどの軽い運動をしたときのほうが短くなることが報告されています。

次に筋肉の柔軟性、関節の可動域を取り戻すという効果が挙げられます。運動後の身体はアンバランスな状態になっています。運動に使われた筋肉は縮み、そのままにしておくと筋肉の硬さや関節可動域の狭さ、身体の前後左右のアンバランスの原因となります。ストレッチや体操をすることにより、運動を行う前の状態に早く戻すことができ、疲労回復や外傷・障害の予防に繋がります。

筋肉だけではなく、血液の循環を正常化するという効果もあります。急に運動を停止した場合、体内を激しく流れていた血液が心臓に戻りにくい状態になります。クールダウンで軽い運動を行うことによって筋肉がポンプの役割を果たし(ミルキングアクション)、身体の末端に留まっている静脈血を心臓に戻す手助けとなり、運動後のめまいなどの予防にも繋がります。

そして、忘れられがちなのは、クールダウンをすることにより心理的に落ち着くことができるという効果です。試合後や運動後は交感神経が優位になり興奮状態になっていることが多くあります。そこで、ジョギングやストレッチを入れることにより、精神的に安定しリラックスすることができます。張り詰めた状態でプレーする選手にとって、気持ちを切り替える上で大切なルーティンとなっています。

テニス選手に関わらず、スポーツを行う方にとってクールダウンを欠かさずに行うということは、次の日に向けてのコンディショニングや怪我の予防などの意味でとても大切です。毎日の楽しいスポーツライフのために、ぜひクールダウンを取り入れて行ってみてください!

横山正吾トレーナー

大阪社会体育専門学校 アスレティックトレーナーコースを卒業後、フリーインストラクターを経て、現在はテニス選手のトレーニング指導を中心に活動中。グランドスラムに出場するプロ選手から、大学、高校のテニス部、キッズまで幅広く指導。2016年から「SHIMADZU Breakers」の社員選手のトレーニングやコンディショニングを支えている。


資格

日本スポーツ体育協会公認アスレティックトレーナー
NSCA(全米ストレングス&コンディショニング)協会認定パーソナルトレーナー
日本体育協会公認フィットネストレーナー

その他

日本オリンピック委員会強化スタッフ