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(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。

SHIMADZU GROUP

世界でたったひとつの試験機

最後の砦の守護神

01

「安心・安全に使っていただくことが最大の使命」と語る
小川社長

試験機は、製品・材料の品質を確保するために欠くことのできない装置。
その性能を維持し、多様化する検査ニーズに応えるために、奮闘するサービス会社。

鉄板とあんまんを同じ機械で測るには?

工場を出るまでは同じ機械なのに、納入先に据え付けられたときには、二台として同じものはなくなる。試験機とはそういう機械だ。
素材をひっぱったり押したりひねったりして、その強度や硬さを確かめる「材料試験機」。より優れた材料を開発する材料工学で用いられるのはもちろん、工場の最終検査で製品の均一性を確かめるうえでも欠かせない。日本の近代工業化を支え、諸国の猛追を受けながらも「メイド・イン・ジャパン」を世界ブランドたらしめている陰の主役だ。
島津製作所も材料試験機のメーカーとして長い歴史を持つ。そのラインナップは基本構成だけで、約20種50型に及び、付属品や制御ソフトウェアの組み合わせ次第で、バリエーションは無数に広がる。「ある鉄工所で鉄板の強さを測るために使われている装置が、別の工場ではあんまんの、ふんわり具合を確かめるために使われているんです」(島津試験機サービスサービス員宇田幸信)
当然ながら、装置の仕様がすべて同じでは使い物にならない。据付けの際、お客様が何を測りたいのか、どう使いたいのかをお聞きして、お客様それぞれに必要なアタッチメントを取り付け、ソフトウェアに最適な設定を施したうえで引き渡す。こうして納入先ごとに作った一点ものといってもいい試験機ができあがる。

02

あの人が来ればなんとかなる

この橋渡し役を担っているのが、島津試験機サービスだ。据付けのほか、試験機等の修理、点検、校正、関連部品の製造販売も行っている。
島津試験機サービスが担当している検査装置の9割がこの材料試験機。ほかにも土木・建築物の耐久度を測定する「構造物試験機」や、高速で回転するハードディスクなどのバランス調整に用いられる「動釣合試験機」。ものを壊さずにその中身を検査するのに使われる「非破壊検査装置」など、実に多岐にわたる。その総数はおよそ2万台。全国8拠点、120人のスタッフが装置の“主治医”となってサポートしている。
試験機は、それぞれの工場にとって品質を確保するうえでの最後の砦。故障して試験ができないとなれば、ラインがいくら製造しても、その工場から出荷することはできなくなる。企業によっては、ラインが一時間止まっただけで数億円の損害につながることも少なくない。
試験機は壊れなくて当たり前、もし壊れたら可及的速やかに修理、が当然なのだ。土日でも夜中でも担当者の携帯電話に休みはない。
「先日も休日に社員同士でバーベキューをしているときに、お客様からすぐ来てくれという電話があり、飛んで行きました」(宇田サービス員)
「社員は大変ですが、それだけ頼りにされているということでもあるんです。『あの人が来てくれたら、なんとかしてもらえる』と思って電話をかけてきてくださっている。ありがたいことです」(小川社長)

03

「祝25年稼働お疲れさま!」
(JFEスチール株式会社様にて)
お客様とともに9000日稼働。200万本もの試験片を休まず試験し続けた島津装置の停止式が開催された。心のこもった感謝の寄せ書きは、サービスマンの勲章だ。

校正の認定事業者として

もっとも、修理する前に故障を予防できるなら、それに越したことはない。そこで同社が力を入れているのが、「点検・校正作業」だ。
校正とは、端的にいえば100キログラムのものを測ったとき100キログラムと表示するように装置の「針を合わせる」ことだ。島津試験機サービスはIA Japan(独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター)が認定するJCSS校正事業者で、島津試験機サービスが調整し針が合っていると認めた装置は、国際的に正確であると認められたものとなる。
JISでは1年以内に校正を行なうことを推奨している。島津試験機サービスでは、これに半年に一度の点検と相談サービスを加えた保守契約も用意。また、同社独自の「島津校正」というメニューも用意している。
「お客様によって使われ方もさまざまですし、保守・校正の選択肢も増やすべきだと思うんです」(小川社長)
最近同社では、試験機用のソフトウェア開発も行っている。試験の手順を自動化したいというお客様の要望に応え、一連の工程をシーケンスするプログラムを開発。お客様からの評価も上々だ。
「ソフトウェアの複雑化や、試験する対象の多様化で、お客様からの期待度がますます高まってきています。私たちの最大の使命は、装置を安心して使っていただくこと。それに加えて私たちの経験からお客様に喜んでいただける価値をどれだけ多くご提供できるかです」(小川社長)

島津試験機サービス株式会社

代表者
代表取締役社長 小川 渉
本社
東京都千代田区神田須田町2-6-5 OS’85ビル Tel.03-5296-0910
従業員
技術/110人 事務その他/10人 合計120人 (2008. 4現在)
設立
1977年7月
事業内容
島津製作所の材料試験機・ 非破壊検査機器および湘南島津の動釣合試験機の据付け、修理・点検・校正業務、それらの機器の移設等各種付帯工事、関連機器・部品の製造・販売業務

(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。