表紙ストーリー表紙に込められた物語をご紹介します。Cover Stories

Vol.28

Vol.28表紙

映画音楽や、コメディレコードのレコーディングディレクターとして辣腕をふるっていたジョージ・マーティンは、輝きに満ちたロック・ムーブメントを横目に、気もそぞろな毎日を送っていた。―1962年初夏。彼のもとを訪れたのは、プロ契約もままならない4人組の新人バンド。ジョージは荒削りだが、非凡な個性とユーモアあふれるメンバーをすぐに気に入った。世界で最も売れたロックバンド『THE BEATLS』の快進撃はここから始まる。ロンドンEMIレコーディングスタジオ(後のアビイ・ロード・スタジオ)。アイデアあふれる若者の音楽に、彼は異分野で培った「耳」と「ノウハウ」を捧げた。録音技術の未熟だった当時、使われることの無かった様々な楽器や最新機材を積極的に持ち込んで、多重録音や逆再生などの新しい試みの実現に、大きく貢献した。シンプルなバンド演奏にボーカルが常識だった世の中はビートルズの斬新なサウンドに熱狂した。ビートルズは、音楽シーンにレボリューションを巻き起こした。新しい音にこだわり続けたジョージは自著の中でこう言っている。“All You Need is Ears”(耳こそはすべて)。メンバーの要求や観衆の熱狂が、彼の耳には「世界は変わりたがっている」。そう聞こえていたのかもしれない。