表紙ストーリー表紙に込められた物語をご紹介します。Cover Stories

Vol.23

Vol.23表紙

「輝く有名な紳士、ドン・クリストバル・コロン」。墓標の言葉と裏腹にコロンブスの晩年はそれほど輝かしいものでは無かった。15世紀の大航海時代、西ヨーロッパ列強は誰もがアフリカ大陸を迂回して東を目指したが彼は違った。迂回をせず一直線に西へ向かうルートが最短であると考えた。根拠となったトスカネッリの地図が地球の直径をかなり小さく見積もるという重大な誤りを犯していたと知らずに。ところがそれが幸いし1492年10月12日、バハマ諸島へ西ヨーロッパ人として最初にたどり着く。地図の誤りに加え測定技術の未熟がもたらした過ちが重なり、彼はその土地を東アジアの島々であると信じて疑わず、そのため未知の大陸に彼の名が与えられることは無かった。さらに時勢の味方も得られず援助者だったスペイン王室から地位や権利も奪われ、失敗に終わった4度目の航海の後1506年この世を去った。日本では有名な「コロンブスの卵」の逸話も当のアメリカ人にはほとんど知られていないという。逸話が彼の偉業に花を添える後世の創作という説が一般的だが、パイオニア精神を讃え「先駆者」「柔軟な発想」や「逆転の発想」の尊さを教えてくれる故事として日本人で知らない人はいないだろう。境遇や賛同者に恵まれなくとも夢を追い求めて、いつの日か未知の卵から常識を覆すような発想や発見が生まれ来る瞬間を捕まえることができたら、それは幸福の「青い鳥」に違いない。