2026.11.06

技術の先にいる「人」を見つめる
神戸大学人文学研究科と共同プログラムを推進

当社には、理系分野で学んだ社員が多くいます。例えば、今年度の新入社員のうち、大学で理系分野を学んだ人は7割以上を占めています。一方で、技術を社会に役立つ製品やサービスへと結びつけるには、その技術を使う人や社会への理解が欠かせません。

そこで当社は、2023年から神戸大学と連携し、社員が人文学をはじめとする多様な視点に触れる「島津リベラルアーツプログラム」を実施しています。これまでに300人の社員が参加しています。

 

異なる専門性をつなぐ

異なる専門性をつなぐ

このプログラムの企画・運営を担っているのは、営業本部グローバル産学官連携推進室マネージャーの松本由紀です。いくつかの企業での経験を経て当社に入社した松本は、理系人材が多い環境とその考え方の違いに驚き、「まるで自分が宇宙人にでもなったようだった」と振り返ります。

松本は全社の人材開発を担当し、教育プログラムの企画・運営に携わったほか、研究開発部門で研究者とともに働く経験もしました。そうした中で、高度な専門性を持つからこそ、自らの専門領域の枠を越え、人文学や社会科学など多様な視点に触れることが新たな発想や価値創出につながることを実感したといいます。

異なる立場や考え方の橋渡し役を担ってきた経験を生かし、社員が専門分野の枠を超えて学び、対話できる場づくりを進めています。

島津リベラルアーツプログラムでは、人文学や倫理、異文化理解などの視点から、技術と社会の関わりを考える多様なプログラムを実施しています。

島津リベラルアーツプログラムの例

プログラム名 対象 内容
外部講師による講演会 全社員 リベラルアーツを学ぶ意義や、技術と社会の関係を考える
オックスフォード大学生との交流 若手社員、海外関連業務の担当者

対話やフィールドワークを通じて異文化への理解を深める

SHIMADZU-KOIAS 雰囲気学講座 若手~中堅社員、新規事業担当者 「雰囲気」の捉え方や分析の可能性を考える

ELSI※講座

技術系社員 技術を社会に実装する際に伴う、倫理的・法的・社会的課題を学ぶ
じんぶんがくカフェ 全社員 建築やデザイン、文学などを題材に、技術や製品の価値から自分たちの働き方、学び方まで、幅広く語り合う

  • ※ELSI:科学技術に関わる倫理的・法的・社会的課題

「雰囲気」を人文学の視点から考える

人や組織の行動に影響を与える「場の空気」や「気配」。こうした数値や論理だけでは捉えきれないものを、人文学を中心としたさまざまな視点から考える「雰囲気学」という学問があります。

松本が運営しているプログラムの一つが「SHIMADZU-KOIAS雰囲気学講座」です。講座では、雰囲気学を研究する神戸大学大学院人文学研究科の久山雄甫准教授らの講演を通じて、アートやデザイン、哲学などの視点から「雰囲気とは何か」を考えます。

講演後には社員同士が対話する場も設けており、組織のコミュニケーションや製品・サービスが受け止められる背景を考えるヒントを得る機会になっています。

神戸雰囲気学研究所 (KOIAS:コイアス)代表、神戸大学大学院人文学研究科の久山雄甫准教授

神戸雰囲気学研究所 (KOIAS:コイアス)代表、神戸大学大学院人文学研究科の久山雄甫准教授 

雰囲気学の講演に参加した社員の気づき

神戸大学との協業のキックオフとして、久山准教授の雰囲気学についての講演会に参加した、鈎 吉秀(受講当時、医用機器技術部 マネージャー)は、次のように振り返ります。

「私たちが開発するレントゲンなどの装置の先には、当然ながらユーザーや患者さんという人々がいます。その方々に受け入れられる製品にするため、開発時にユーザーニーズや要望を聞くことは当たり前です。しかし、人文学的な考えに触れることで、それだけでは捉えきれない重要な視点があると思うようになりました」

鈎はこの気づきをきっかけに、その後も関連イベントへの参加を続けています。

この日のテーマはファッション。参加者はお気に入りのスタイルで参加した

この日のテーマはファッション。参加者はお気に入りのスタイルで参加した

社外の視点から、自社を見つめ直す

「神戸オックスフォード日本学プログラム(KOJSP)」は神戸大学とオックスフォード大学の交換留学プログラムです。オックスフォード大学アジア中東学部(旧東洋学部)日本語専攻の学生が約1年間、神戸大学で学びます。当社は、その中で希望した学生を1週間のインターンシップ生として受け入れています。

2026年夏には、島津製作所 創業記念資料館を中心にインターンシップを実施しました。参加したエオス・リアウさんは、当社の歴史や企業文化に触れ、成果報告会で「島津製作所が150年続いていることよりも、その中で何を受け継ぎ、何を変えてきたのかが重要だと感じた」と語りました。

企業ミュージアムについても、「企業の歴史を説明するだけでなく、歴史や価値観を体験として伝える場」との考えを述べました。学生の視点を通じて、社内で当たり前になっている価値観や歴史を改めて見つめ直す機会となりました。

資料館のレントゲン装置「ダイアナ号」の清掃を体験するエオスさん

資料館のレントゲン装置「ダイアナ号」の清掃を体験するエオスさん

インターンシップの成果報告会

インターンシップの成果報告会 

異なる視点との出会いを、次の発想へ

異なる視点との出会いを、次の発想へ

松本は、こうした取り組みについて次のように語ります。 

講演会やじんぶんがくカフェ、海外の大学生との交流は、短期的な効果が見えにくい取り組みではありますが、異なる分野との出会いによって生まれる小さな気づきが、新たな発想や価値創造につながると考えています。

専門分野の枠を超えた対話や交流を通じて、社員一人ひとりが視野を広げ、新たな可能性を見いだすきっかけになればと願っています。

技術そのものだけでなく、それが使われる社会や、受け取る人の価値観にも目を向ける。そうした視点を社員が育むことが、本プログラムの目指すところです。 

 

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