2026.08.25

獺祭×SHIMADZU
日本酒の魅力をサイエンスの側面から世界へ

国内外で高い評価を受ける日本酒ブランド「獺祭(だっさい)」。その製造元である山口県岩国市に本社を置く株式会社獺祭(以下獺祭)では、伝統的な酒造りの技術を大切にしながら、分析技術を活用した新たな挑戦が進められています。

「獺祭」ののぼり

当社では、広島支店と分析計測事業部Solutions COE(以下SCOE)が連携し、獺祭との協業を推進してきました。香りや味わいの可視化を通じて品質向上に貢献するとともに、日本酒の魅力を世界へ発信することに取り組んでいます。

 

分析依頼から始まった協業

獺祭とのコラボレーションのきっかけは、GC(ガスクロマトグラフ:液体や気体に含まれる成分を分析する装置)を用いた日本酒の分析依頼でした。

当時、獺祭では、人の感覚によって行われていた香りの評価を、分析によって客観的に把握できないかと検討されていました。そこで広島支店を窓口としてSCOEのラボで分析を実施し、日本酒の品質評価に分析技術を活用する取り組みが始まりました。

株式会社獺祭 製造部イノベーション研究室 影井氏

株式会社獺祭 製造部イノベーション研究室 影井氏

分析を進めるなかでは、日本酒の香りに関するさまざまなデータを取得し、その結果について両社で意見交換を重ねました。香りに関する分析データは、品質管理の基盤となる機密性の高い情報ですが、獺祭の協力のもと、データの活用方法や品質向上への活かし方について検討を進めてきました。

株式会社獺祭 製造部イノベーション研究室 影井氏

こうした取り組みを通じて両社の連携は、依頼されて分析結果を返すという枠を超え、新たな分析手法の検討や活用方法の提案へと広がっていきました。現在では、酒造りの現場で培われた知見と分析技術を組み合わせながら、日本酒の新たな価値創出に向けた挑戦を続けています。

分析技術が拓く日本酒の可能性

日本酒の品質評価には、これまで造り手の経験や感覚が大きな役割を果たしてきました。当社の分析技術は、その評価を客観的なデータで支える役割を担っています。

日本酒の香りに関わる成分を測定することで、これまで感覚的な表現で語られていた違いを数値として把握できるようになります。これにより品質評価の一部を客観的に行うことが可能となり、品質管理や製造工程の検討において新たな視点を提供しています。

分析の様子

一方で、分析結果と実際に人が感じる印象が必ずしも一致するわけではありません。同じような分析結果であっても、人によって香りの感じ方が異なる場合があります。こうした違いは、日本酒の奥深さを示す一例でもあります。分析技術は感覚を置き換えるものではなく、感覚をより深く理解するための手段として活用されています。データと経験の両方を活かしながら酒造りに向き合うことで、日本酒の新たな可能性が広がっています。

分析の様子

世界へ広がる日本酒の魅力

今回の取り組みを支えているのが、広島支店とSCOEの連携です。広島支店がお客様との窓口を担い、SCOEが分析・評価を担当することで、顧客対応と技術の両面から獺祭の課題解決を支えてきました。

獺祭との協業では、取得したデータをもとに意見交換を重ねながら、日本酒の品質向上や新たな価値創出の可能性を共に探ってきました。さらに、酒造りと分析という異なる分野の技術者同士が交流を深めるなかで、日本酒中の香気成分を簡便に低コストで定量分析するアプリケーションを共同で開発しました。このアプリケーションを活用することで、香りの違いをデータとして可視化し、火入れ前後の香気成分の変化を客観的に確認できるようになりました。こうした取り組みは、日本酒の品質管理や製造工程の検証に役立てられています。

ガスクロマトグラフNexis GC-2060(左)とヘッドスペースサンプラHS-20 NX

ガスクロマトグラフNexis GC-2060(左)とヘッドスペースサンプラHS-20 NX。日本酒中の香気成分を分析する装置

 

こうした取り組みを通じて、両社の関係は単なる装置メーカーとユーザーの関係を超え、課題を共有し、ともに解決策を考えるパートナーへと発展しています。

香りや品質を客観的なデータとして評価し共有する仕組みが広がれば、日本酒の価値をより分かりやすく伝えることができます。また、日本酒づくりと分析技術の融合によって、新たな研究や商品開発の可能性も広がります。

伝統とサイエンス。それぞれの強みを活かした両社の挑戦は、日本酒文化のさらなる発展と世界への発信につながっています。

【獺祭 × 島津GC】世界が認める日本酒づくりを支える分析技術

担当者のコメント

獺祭様との取り組みを通じて、日本酒の香りや味わいの違いを分析によって可視化し、感覚だけでは伝えきれない魅力をより分かりやすく伝えていきたいと考えています。

まずはコラボレーションビールで得られた知見をモデルケースとして獺祭様の課題解決に貢献し、将来的にはコラボレーション日本酒の実現を目指しています。また、その取り組みを通じて日本酒分析のグローバルスタンダードの確立につなげるとともに、GCやGCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)をはじめとする分析技術の可能性を広げていきたいと考えています。

 

URLをコピーするタイトルとURLをコピーしました
他の記事も見てみる