技術系出身の社員が考案した
課題解決型の新人研修「島津で答えを」
島津製作所の新入社員98%が「有意義だった」と答えた新入社員研修「島津で答えを」。長年続けてきた研修内容を見直し、2021年からスタートしました。考案したのは、研究部門で20年以上働いてきた松田直樹。いわゆる人事のスペシャリストではなかった彼が、研修を通して新入社員に伝えたかったこととは――。
新入社員の意識を
「内」から「外」へ
島津製作所では長らく同じ研修を行っていました。島津製作所の事業や製品群、それに携わる技術者の思いなどを知ることを目的に、職場訪問やグループワークを行い、その結果を発表するというもので、新入社員にとって学びの多いものでした。
研修を考案した人事部人財開発室の松田直樹
「島津内のことは後からいくらでも知ることができますが、島津を知らない今だからこそ出るアイデアがあるはず。これは新入社員の強みだと考えました」。そう語るのは、根っからの技術者である松田直樹。2017年に人事部に異動するまでは、当社の研究部門である基盤技術研究所で20年以上、分析計測技術の研究・開発を行ってきました。
「学生と社会人の大きな違いは、アウトプットの量と質です。入社後は、自ら調べて考え、生み出していかねばなりません。社会人へのスタートをきるための研修が、講師が一方的に話し、新人はひたすらノートを取るというスタイルでは、学校の授業と何ら変わりません。インプットは必要最低限にとどめ、できるだけアウトプットの量を増やしたいと考えていました」。
フレッシュな感性で社会課題に挑んでほしい
約2年間の構想を経て誕生したのが、ワークショップ型の新人研修プログラム「島津で答えを」です。新入社員がニーズの探索から解決策の考案、発表までを一気通貫で行う研修で、まずは5人程度のグループに分かれて実現したい未来や目指すべき社会について議論を深めます。それを実現するために、島津の強みを活かして何ができるのかを考え、先輩社員へのヒアリングなどを通して、内容に磨きをかけていくというものです。


新入社員同士で社会課題を出し合い、ふせんに書いてまとめる
「新入社員のフレッシュな視点を活かし、斬新なアイデアが生まれることを期待しました。島津製作所の事業の根本には、“科学技術で社会に貢献する”という社是がありますが、実践するには社会課題を見つけることが大切です。そのためには、日々のニュースや情報収集の中で、これは!と気づくことができるアンテナの感度を高めることが重要です。この研修では、まずその感覚を養ってもらいたかった。新入社員だからといって妥協することなく、社会人としてのアウトプットの質を求めました」(松田)。


少人数のグループで6日間かけて考え抜き、成果の発表は、社員誰でも自由に参加できる形で本社大ホールで行われました。発表会には、200人以上の社員が訪れ、新入社員と闊達な議論を交わしました。
発表した全18グループの半数以上は、当社が注力しているヘルスケア分野のテーマを選定しました。健康寿命を延ばすための予防医療のソリューションとして「呼気診断キット」や「自動排泄診断トイレ」などのアイデアが生まれたほか、「体内のマイクロプラスチックの量を分析し、病気との相関関係を明らかにすることで、社会課題として提起したい」との思いからビジネスモデルを提案するなど多岐にわたりました。
発表を聞いた社員からは、「市場や課題、製品のアイデア、実現性の検討、今後の展開など細かいところまで作り込まれていて感心した」「レベルの高いポスター発表に刺激を受けた。自分はいつの間にか現実ばかりを見てしまいがちになっていたことに気づいた」などの声が寄せられ、双方にとって刺激的な場となりました。
研修を終えた新入社員。左から金原 菜々香、ANJALEKAR MANAS、喜多 佑輔
以下は、研修を終えた新入社員の感想です。
「私たちのグループは蓄電池をテーマに選び、安全性やリサイクル技術の確立といった課題を解決すべく、新しい検査技術の開発について発表しました。自分の専門知識から離れていたため、市場や課題を理解することや、島津で何ができるのかを考えることに苦労した一方、面白くもありました。バックグラウンドの異なるメンバーが集まったからこそアイデアが生まれること、多角的な視点を持つことの重要さを学びました。(金原 菜々香)」
「私のチームは、人の健康をテーマに選び、個人の栄養状態に合わせたレシピを提案するスマート冷蔵庫を解決策として発表しました。技術系の自分には、モノを売るための視点がなかったことに気づきました。事業を通した解決策を考える上で、メンバーとともに、開発や製造、営業、マーケティング、お客様などさまざまな視点に立って議論したことがすごく刺激的でした。(ANJALEKAR MANAS)」
「研修を受ける前は、島津の製品や事業を少し知っている程度でしたが、研修を受けたあとはチャレンジを大切にする会社なのだと理解が深まりました。自分の仕事を任されるようになってからも、挑戦する姿勢を忘れずにいたいです。(喜多 佑輔)」
新入社員が「夢」を見つける場
この研修にはもう一つ目的があります。就職活動を終え、燃え尽きてしまいがちな新入社員が「島津製作所で何がしたいか」「どう社会に貢献できるのか」という次の夢や目標を見つけるための支援をすることです。それは、採用や研修を担当している人事部の願いでもあり、社会課題に向き合い続けてきた島津社員からのエールでもあります。
新入社員研修に携わる人事部のメンバー。中央が松田直樹、後列右端の中村憂輝、続いて塩田貴佳が2025年の「島津で答えを」を担当した
松田は言います。「島津製作所は、何かをやりたいと思ったことに対して寛容で、チャレンジを後押しする風土があります。この研修を通してその風土を体感し、島津を通して社会に貢献していく面白さを知ってほしいです」。
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