「GCMS-QP2050」が「十大新製品賞」受賞

日刊工業新聞社が主催する「2024年 十大新製品賞」の本賞に、島津製作所のガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」が選ばれました。

「GCMS-QP2050」と開発メンバー

「GCMS-QP2050」と開発メンバー

 

十大新製品賞とは

「十大新製品賞」とは、日刊工業新聞社がその年に開発された新製品の中から、独創性や性能の優れた製品を選び、モノづくり産業の発展や日本の国際競争力に貢献する製品を表彰するものです。

分析計測機器事業部 副事業部長 宮川治彦(写真右)(日刊工業新聞社提供)

分析計測機器事業部 副事業部長 宮川治彦(写真右)(日刊工業新聞社提供)

贈賞式は1月28日に東京・大手町の経団連会館で行われました。分析計測機器事業部の副事業部長、宮川治彦が賞状を受け取り、「質量分析計の設計を刷新し、安定した高感度データの取得とメンテナンスの省力化を実現しました。市場ニーズを反映した開発を評価いただき、大変光栄です。受賞を励みに、これからもお客様のご要望にお応えしていきたいです」と語りました。

小型化、感度と耐久性を向上
さらに人手不足な現場を助ける装置へ

ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)は、ガスクロマトグラフ(GC)と質量分析計(MS)が一体化した装置で、物質を分離し、それぞれの成分を分析するために使用されます。食品中の残留農薬や添加物の検出、医薬品の分析、水質や土壌中の微量有機汚染物質の特定など、幅広い分野で活躍しています。

GC-MSを扱うには知識が必要ですが、分析現場では熟練者がいないなどの人手不足が課題です。誰でも扱いやすく、作業効率の良い装置が求められていました。そこで島津製作所のGC-MS開発チームは、感度だけでなくメンテナンス性や使いやすさの向上を目指して、開発の舵を切りました。

ガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」

ガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」

そうして完成したのがガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」です。試料のイオン化に必要な電子を放出する部品を長寿命化することでメンテナンス頻度を最大80%低減しました。また、イオン源部品を消耗品にすることでメンテナンス時間を約25分から1分程度に短縮し、作業者の効率を向上させました。初心者にも使いやすいようソフトウエアを刷新するとともに、質量分析部の装置幅は業界最小クラスの280mmまで小型化。従来機の内部機構の設計を根本的に見直すことで、従来機と比較して感度が2.5倍、耐久性が約2倍向上しました。

イオン源部分のメンテナンス方法を簡略化

イオン源部分のメンテナンス方法を簡略化

22年ぶりのフルモデルチェンジ
開発のスタートから苦難の連続

「GCMS-QP2050」は、従来機からの22年ぶりのフルモデルチェンジです。開発チームリーダーの髙倉誠人は「主要な構成部を全て改良したため、開発の範囲が広く、苦戦しました。過去に開発を経験したことのある担当者が少なく、従来から変えても良いポイントと変えてはいけないポイントの見極めが難しかったです。多くの方にアドバイスを頂きながら、試行錯誤して製品の完成度を高めました」。

工作中の様子

「GCMS-QP2050」の機能面を説明するチームリーダーの髙倉誠人(写真中央)

そんな中、コロナ禍が訪れます。「もともと大変なプロジェクトでしたが、コロナ禍で出社制限がかかり、開発はストップせざるを得なくなりました。そのため、開発期間は約4年かかりました」と振り返ります。

特に大きな課題はメンテナンスの簡略化でした。開発メンバーの畑翔太は、「定期的なメンテナンスが必要なイオン源部分の構造を一から見直しました。イオン源部分は、装置を使い続ける上で洗浄や研磨といったメンテナンス作業が不可欠ですが、部分を消耗品に変えることでその作業を減らし、作業者の負担を軽減しました。お客様からは、初心者でも扱いやすく、作業が覚えやすいので助かるといった声をいただいています」と語りました。

開発メンバーの小木曽 舜は「GC-MSのような精密機器では少しの変化で他の機能に干渉してしまいます。フルモデルチェンジはすべてを刷新するので、“もっとこうだったらいいのに“という願望を叶える最大のチャンスです。今回の開発では、お客様のニーズと開発チームのコンセプトを最大限盛り込みましたが、これで満足ではありません。製品を出したそばから次回のフルモデルチェンジを見据えるのが私たちの仕事です」。

「GCMS-QP2050」開発メンバー

「GCMS-QP2050」開発メンバー。左から小木曽舜、髙倉誠人、山村 雄太郎、畑 翔太

 

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