2025.02.13

かつてのゲーム好き少年が掴んだ
世界的AIコンペティション「Kaggle」の金メダル

「Kaggle Master」の称号を手にした入社4年目の金本和樹

「Kaggle Master」の称号を手にした入社4年目の金本和樹

5度目の挑戦で掴み取った世界的AIコンペティション「Kaggle」の金メダル――そこには、ノイズや欠損だらけのデータを攻略するため、3か月間ひたすら徹底的に考え続けた、試行錯誤の日々がありました。

「Kaggle Master」の称号を得た金本和樹(島津製作所 分析計測事業部技術部イメージングG)に、今回の挑戦についてインタビューしました。

 

3,559チーム中8位! たった1人で挑み続けた3か月

「Kaggle」は、2,000万人以上のデータサイエンティストが集う世界最大のプラットフォームです。企業や研究者が提示する課題に対して、AIモデルを提案して精度を競い合い、優れたAIモデルは賞金と交換される仕組みです。

AI(人工知能)やML(機械学習)における「モデル」とは、特定のタスクを実行するためにデータを使って構築された数学的な表現です。データからパターンを学び、将来のデータに対して予測や分類を行うためのものです。

金本が作成したモデルを学習する流れの概略図

金本が作成したモデルを学習する流れの概略図

今回、金本が挑んだコンペティションは、「Child Mind Institute — Problematic Internet Use」です。Child Mind Instituteが主催し、NVIDIAやDELL Technologiesなどの大手企業がスポンサーを務めました。

「手首に装着したセンサーのデータ、アンケートのデータ、身体測定スコアなどから、青年期におけるインターネット依存の重症度を予測する」という内容でした。開催期間は2024年9月から12月の3か月間で、3,559チームが参加しました。

AIイメージ図

金本は単独参加ながら、見事に8位に入賞。金メダルを獲得し、コンペティション参加者の上位1%に相当する「Kaggle Master」に認定されました。

「一意専心」試行錯誤を繰り返す

金本がこの課題に挑戦した理由は、初挑戦での悔しさと、時系列データ解析への興味でした。今回のデータには、一般家庭で実際に取得されたノイズや欠損の多いデータ、時間に沿って取得された時系列データが含まれていたといいます。

「ノイズや欠損に強い『頑健なモデル』を構築したい」という思いから、試行錯誤を重ねてモデルを改善。その努力が実を結び、コンペティションで高い評価を得ました。

「3か月間、一意専心で試行錯誤を繰り返しました。体力づくりのためのランニングは試行内容を整理するのに最適で、食事中もスコアを上げる方法をずっと考えていた」と、金本は振り返ります。勝因について尋ねると、「ぶっちゃけ、根性論です!」と笑顔で答えてくれました。

「時系列データ」の1つと話す金本

クロマト分析装置のデータも、時系列に沿ってピークが出る「時系列データ」の1つと話す金本

「時系列データ」の例:クロマトグラム

「時系列データ」の例:クロマトグラム

ゲームで培った集中力と競争心

金本の学びの原点を尋ねると、「子どもの頃からゲームが好きで、さまざまな種類のゲームに熱中した。好きが高じて、情報系の大学進学の動機になった」と話します。ゲームを作れるかも…と思って入学した大学で出会ったコンピューターサイエンスにのめり込み、それが現在のキャリアにつながったそうです。

「Kaggleはゲームの要素が強く、オンラインゲームのように競った結果が逐次ランキングに反映される仕組みが面白い」と語る金本。かつてのゲーム好き少年の競争心を煽るようなランキングの仕組みも後押しとなり、世界の舞台で成果を掴み取りました。

AIを活用した画像解析の社会実装

金本は、自らの仕事を画像解析エンジニアと名乗ります。AIを搭載したマルチデータ解析プラットフォーム「PLUS ALGO」や細胞観察サポートアプリケーション「Cell Pocket」などのソフトウェア開発に携わっています。

AIを活用した画像解析の例をご紹介します。PLUS ALGOを利用した「PLUS ALGO™ AM」は、電子基板に実装した部品のはんだ付けの品質を判定できます。突起の形状や、はんだ接合部に存在する空隙のボイド率を画像から解析すると、検査の自動化やエラー防止となります。

このように、AIを活用した画像解析技術は、ものづくりの現場や医療の分野など、さまざまな場面で社会に貢献しています。

電子基板のX線透視画像を使用し、AI技術によって裏面のチップコンデンサを分離

電子基板のX線透視画像を使用し、AI技術によって裏面のチップコンデンサを分離

 

判定結果項目

判定結果項目
判定結果項目

AI画像解析で検査を自動化し、ビューマンエラーや検査品質のばらつきを防止

AIによる細胞観察情報の数値化と解析結果の共有管理 - Cell Pocket Ver.2 -

金本のコメント

「Kaggle」に参加したきっかけは、希望した異動に伴って画像処理エンジニアとしてのキャリアを歩み始めたことです。AIとの関わりが深くなったことをきっかけに、もっと知見を高めたいと考えて自ら調べて取り組みました。

金メダルを獲得できたのは、試行錯誤を続ける根気と、ロジックを立てて考える力が役に立ちました。もちろんKaggleのゲーム性も私を夢中にさせました。今回は1人で挑戦しましたが、チームでもチャレンジしてみたいと考えています。これからも新たな課題に挑戦し、画像解析エンジニアとしての技術を社会に役立てたいと思います。

 

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