招徳酒造株式会社
杜氏 國石 直

科学的に分析しながらつくるこの日本酒プロジェクトでの気づきをお聞かせください。

普段現場で測っている測定項目は少ないので、それをもっと詳細に、例えばアミノ酸の動きを測れたというのはとても興味深かったです。今までは、アミノ酸トータルとしてでしかみていなかったので、その中でどういうアミノ酸がどのタイミングで増えているのかというところが分かったのは面白かったですね。

今後、例えばアミノ酸の動き方の理由を検証して「こういうアミノ酸が欲しかったらこういう操作をしたらいいな」みたいなものが分かるようになれば面白いかなと思います。

今後の日本酒つくりで、興味をもたれているデータについてお聞かせください。

ひとつは、もろみをずっとみていたのですが、麹の方も詳細にみてみたいという思いがあります。
また精米歩合についても、もっと黒いお米、磨いていないものからもっと磨いて、大吟醸でどういう違いが出るのかなど、この辺りを比べてみたい。香気成分なども見たいですね。

分析対象成分としては、アミノ酸、香気成分、糖と有機酸で問題はないですね。ただ、できればタイムリーに、今のもろみの状態がどうなっているかを知ることができたら、一番ありがたいです。例えばCO2発生量とか。あとは表面の泡のぶくぶくっていう出方が激しい時とか…。今どういう状態なのかを過去のデータと比べて見るところまでできるようになればいいなとは思います。やっぱり発酵が旺盛な時は泡がいっぱい出ますし、落ち着いてきたら減っていくので、トータルのCO2はどのくらい出たとか、その辺りまで分かったら尚いいかなと。
アルコールを分析しなくても、CO2発生量で、ある程度の発酵の動きがすぐその場で分かるんじゃないかなと、淡い期待を抱いています。

この日本酒プロジェクトの今後への期待をお聞かせください。

せっかく田んぼで米作りをするところからはじめているので、「旭4号」もいいですけど、今度は別のお米でやってみるとか。米を変えるとデータも変わるので、それを過去のものと比べてみたいですね。

「日本酒」の将来への期待をお聞かせください。

もっと世界的に広まってほしいなと思っています。外国の方でも、日本酒に興味を持っている人はいます。
日本酒がユネスコの文化遺産に登録されたので、良いきっかけになるのかなと思っています。価格面、流通面も含めて、もっとワールドワイドに広がってほしいです。

地方独立行政法人 京都市産業技術研究所
清野 珠美

当社との地域活性化にむけた異業種コラボレーションへの感想や今後の期待をお聞かせください。

今回、招徳酒造様の協力もあって、3年間ある程度似たような酒造りの条件で、毎年京都酵母を変えてお酒を造っていただきました。島津製作所の皆様には、そのお酒を毎年楽しんでいただいたと思います。
我々が京都酵母をブランディングしていくときのコンセプト「京都酵母でお気に入りの日本酒を探す」を、この企画ではまさに体現していただいたと思っています。

我々は京都の酒蔵の活性化を目指して、京都酵母のブランディング活動を行ってきました。それを目に留めていただき、我々の頑張ってきた成果を目に見える形で実現できたと、とても感謝しています。

「源遠流長」を飲んでいただいた皆様、何番目のお酒が良かった等、お好みはきっと皆さんそれぞれあると思います。この取り組みを経て、京都酵母を使った京都の日本酒に、これ以降も興味を持っていただけたら非常に嬉しいなと思っています。

この日本酒プロジェクトの今後への期待をお聞かせください。

京都でお仕事させていただいているので、京都の食材や京都のお料理と、京都酵母を使ったお酒のペアリング、相性を、お酒の成分分析のデータと何かしら関連づけていくことを、将来的にはやってみたいです。また、お米をまた変えていくということで、お米とそれぞれの酵母の良い作り方にもトライしていきたいです。
これは業界の皆様から常日頃どうなのかなと言われている部分でもあるのですが、非常に難しい。いつもそれに近いようなことをやっていて、なかなか考察がうまいところまでいきません。もし機会があり、島津製作所様の分析力・解析力などをお借りできるなら、ぜひそういうところをもっと深く掘り下げてやってみたいなという思いはあります。

今回のような取り組みを我々の産技研からも発信し、関心を持ってくださる企業さんも少しずつ出てきていますので、反響は大きいのかなと思っています。

「日本酒」の将来への期待をお聞かせください。

日本酒がワールドワイドな存在になってほしいという思いはあります。
近年は、海外で蔵元を立ち上げて、なんなら原料米も海外で作って、海外でどんどんお酒がつくられていくようになってきています。その場合は「日本酒」にはならず「清酒」という名前になって、いわゆる「SAKE」として売られていきます。
そういった中で、日本の中で造られるいわゆる「日本酒」はやっぱりすごいよねと思っていただけるようにしたいです。そのためにはブランディングが大事で、我々公設試験場が、少しでもその一助となる活動ができたらいいなと思っています。海外でできる「SAKE」に負けないように、「日本酒」の品質とブランドを上げていきたいです。

株式会社 島津製作所
分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 LCBU 松本 恵子

この日本酒プロジェクトの経験や感想をお聞かせください。

苦労よりも楽しかったこと、嬉しかったことの方が圧倒的に多かったです。
これまでは、機能性成分など対象成分と分析値との関係性が分かったうえで食品を分析するということが通常でしたが、今回は”味わい”という、様々な成分が関与する分析でしたので、分析結果の解析が難しかったです。しかしながら、日本酒のつくり手と酵母のつくり手、そして酒米のつくり手、それぞれのつくり手とコミュニケーションをとることができました。分析結果を解析するうえで今までにない貴重な情報だったと思います。

また、酒蔵でつくる過程を知ることができた点がとても貴重で、これまでとは比べようのないほどの深さで解析することができました。こういった結果を学会やセミナーでお話しさせていただいていますが、買ってきたものだけを分析し結果を出すのとは違い、そこに到達するまでのストーリーをお話しできるので、聴いていただいている方の反応の熱量も感じられ、いい取り組みであったと思っています。こういった学会発表等を通して、アンケートで良い反応をいただいたり、別の研究会での発表機会のご依頼を頂戴しましたので、何かお客さまの心を動かすような取り組みになったのだなと実感しています。

島津製作所は装置メーカーなので、もちろん装置そのものをPRしたいのですが、装置がどのように役立つか、装置を使うことで何が分かるようになるかが、一番伝えたいことです。それを伝えることによって、お客さまの業務がどう改善されるかをお客さま自身がイメージしやすくなること、この取り組みはそのゴールに直結していたと思っています。この取り組みが、3年で終わってしまうのはとても寂しいなと感じています。

この日本酒プロジェクトの今後への期待をお聞かせください。

日本酒業界が盛り上がっていくような取り組みをしたいなと思っています。
そのために、日本酒業界が課題としていること、要望などを科学的に解明していくということが重要だと思っています。また、「日本酒」について、まだ分かっていないことや可視化したい特徴を分析データにより解明して、酒蔵さんの言葉とともに添えられたらいいなと思っています。

島津製作所150周年へのメッセージ

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