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File No.06

働き者は長生きする?

心臓の秘密

どうして心臓は休まないのか

「心臓が止まるほど驚いた!」とよくいいますが、ちょっとやそっとでは止まらないのが心臓。休んでいるときも寝ているときもドクン、ドクンと拍動を続け、全身に血液を送り届けています。その数なんと、1日に約10万回。一生では30億回に達します。

心臓は筋肉の塊りなので、これだけ動けば疲労することもあるはずです。ところが、心臓は休むことはありません。いったいどうして平気なのでしょう。

普段あまり使っていない筋肉を激しく使って筋肉痛を起こしたことくらいは、誰もが一度はあるでしょう。しばらく休めばこの痛みは取れますが、心臓は休むことができませんから、筋肉痛を起こすこともできません。

筋肉痛の原因は筋肉細胞を酷使したことによって、筋肉内に乳酸がたまったためとされています。心臓の心筋細胞も活動すれば乳酸が発生することに変わりはありません。ところが、心筋細胞はその乳酸をエネルギー源として活用する力を持っているといわれます。心筋は、ふつうの筋肉とは違う特別な筋肉なのです。

さらに、心筋細胞はほかの細胞と異なり、酸素の消費量が非常に多いことが知られています。心臓の重量は体重の0.5%程度にもかかわらず心臓の筋肉が受け取る血液の量は、心臓が送り出す血液の5%にもなります。一方、腕や足などの骨格筋の重量は体重の30%くらいで、受けとる血液の量は約15%です。つまり、心臓の筋肉は骨格筋よりも重量あたり20倍も多くの血液を普段から受けとり、血液に乗って運ばれてくる酸素を消費しているのです。心臓は動き続けるために莫大なエネルギーを必要としますが、そのためのエネルギー源も豊富に供給されてくるため、疲れ知らずで動き続けられるのです。

さて、ここで一つの疑問が生じます。生体のエネルギー源となるのは、ATPという物質です。これを大量につくれば、体に有害な物質も大量に発生してしまいます。その筆頭が活性酸素。細胞のDNAを傷つけ、老化を進めたり、がんの原因にもなります。

いわば細胞を錆びつかせてしまう厄介者。休むことも許されず、大量の活性酸素にさらされ、極めて過酷な環境に置かれているのが心臓なのです。

とはいえ、なんとかして活性酸素を除去しなければ、心臓は早々に壊れてしまいます。いったいどんな仕組みがあるのでしょうか。

働き者が働きすぎない仕組み

心臓は決して勝手に動いているわけではなく、実は自律神経によってコントロールされています。交感神経が活発になれば、血圧が上がり、拍動が早くなる。副交感神経が活発になれば、反対に血圧は下がり、拍動は遅くなります。緊張したときに動悸がするのは、逃げなればという防御反応によって交感神経を緊張し、体に多くの血液を送るために血圧を上げているのだと考えられています。

この仕組みをもう少しミクロに見てみると、交感神経が緊張したときは、その末端からノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されます。心筋のレセプターがノルアドレナリンを受け取ると、心筋細胞は活動的になるのです。反対に、副交感神経が緊張すると、末端からはアセチルコリンという物質が分泌され、レセプターが受け取ると、心筋は活動レベルを落とします。心臓の活動はこの2つの神経伝達物質によってアクセルとブレーキを踏んでいるとわけです。

実は心臓は、このアセチルコリンを副交感神経の末端からだけでなく、自ら作り出す力を持っていることが最近わかってきました。つまり、自律神経の指令に寄らないでも、心筋中には常に大量のアセチルコリンがあり、働き過ぎないよう声をかけているというわけです。率先して働き方改革を実践しているというところでしょうか。

これに加えてATP合成の多い心筋細胞では、活性酸素を消去する活性酸素除去酵素も多数存在しており、たえず解毒が行われています。これにより、私たちは生涯にわたって心臓の音を聞き続けることができるのです。

もちろん、丈夫な筋肉とはいえ、過信は禁物。働かせすぎはもちろんのこと、脂っこいものをとりすぎてポンプを詰まらせたり、ストレスの多い生活を続けて自律神経を乱れさせたりしないよう、心臓のためにも健康的な生活を心がけたいものです。

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