異分野技術の応用
感染症に対する技術応用の可能性

島津製作所は1957年以来、半世紀以上に渡って自衛隊や国内外の航空機メーカー向けに様々な製品・技術を提供してきました。
いずれも世界トップクラスの技術力や他社に例を見ないオンリーワン製品です。当社は現在、新型コロナウイルスを始めとする感染症に対して、こうした航空分野の製品・技術を応用した新事業を検討しています。ここではその一部をご紹介します。

対感染症技術1

医療従事者を情報でバックアップ
診断アシスト機能付きフェイスシールド

島津製作所はヘッドマウントディスプレイ(HMD)と呼ばれる航空機パイロットの頭部に装着する情報表示装置を手掛けています。パイロットは「自分から数百メートル先を高速飛行する航空機」と「手元にある計器類」という2つに意識を払いながら機体を操ります。つまり「動と静」「遠と近」の情報を瞬時に読み取らなければならないのです。この難しさやストレスを緩和しているのがHMDです。

現在、HMD技術をベースに開発を進めるのが「診断アシスト機能付きフェイスシールド」(仮)です。同シールドには来院者の体温や症状、検査結果や治療履歴などが次々に表示されます。当社が得意とするセンシング技術を用いて、医療従事者が目にした来院者のリアルタイム情報が画像情報から読み取れるというものです。多忙を極める医療従事者もパイロットのように様々な情報を瞬時に取り込み、決断を下す必要があります。「診断アシスト機能付きフェイスシールド」はいわば医療用HMDです。感染症と最前線で対峙する医療従事者を「ハンズフリーでの情報処理」で支える未来技術です。

対感染症技術2

閉鎖空間の効率的な浄化に貢献
エアサイクル式空気清浄・温調装置

当社の航空機器事業部にはエアマネジメントシステムと呼ばれる製品があります。温調や換気、与圧、抽気、防氷といった航空機内の空気系統を統括する制御装置群であり、搭乗者に快適な環境を提供するものです。島津製作所は航空機の熱負荷や飛行条件などに合わせて、機内環境の最適化をお手伝いしてきました。

現在、エアマネジメントシステム技術は、新型コロナウイルス感染症対策として注目を集めています。それは「エアサイクル式空気清浄・温調装置」への応用です。空気を循環させる航空機用タービンを小型化して、滅菌・ウイルス不活性化機能を取り付ければ、きれいな空気が求められる循環呼吸器病棟などの効率的な空調に貢献できます。パイロットや乗客に快適さをもたらす技術が、医療従事者や入院患者の安心・安全を守ります。

この未来技術が役立つのは医療現場だけではありません。現在、新型コロナウイルス感染症の感染防止策として「3密」(密閉、密集、密接)の回避が挙げられます。飲食店や娯楽施設などは利用者数を減らすなど3密回避・解消に取り組んでいるものの、対策が困難場所もあります。例えば「災害時の避難所」です。我が国では台風や地震などの自然災害が頻繁に発生し、近年はゲリラ豪雨による水害も目立ちます。地域住民に安心して避難して来てもらうには、感染対策に万全を期す必要があります。エアマネジメントシステム技術を用いた「エアサイクル式空気清浄・温調装置」は、人々が集まる空間の安全性向上に役立ちます。体育館のような避難所以外にも、難民キャンプのような収容施設での利用も想定できます。