challenge 社会課題への挑戦

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島津製作所の社会課題への挑戦 非常事態の医療現場を救う一刻も早い診察を実現

逼迫する医療現場を支えたい!
小型PCR検査装置を開発

患者と医療機関の双方から日増しに高まる声

日本での新型コロナウイルスの感染拡大初期は、地方の衛生研究所や特定の医療機関などでしか実施できなかったPCR検査を、地域の医院やクリニックでも対応できるようにしてほしいという声が日に日に増しました。さらに、感染の波はありながらも人々が社会活動を取り戻していくなかで、業務に携わることや学校生活の継続のため「陰性証明」を必要とするケースが増え、PCR検査環境の拡充は社会的ニーズとなっていました。

逼迫する医療現場を救うため、そして1日でも早くすべての人が普通の生活を取り戻すため、街のクリニックのような小規模な医療機関でも少ない負担で導入でき、初めてPCR検査を行う場合でも簡単に運用できる機器を求める声が高まりました。パンデミックに立ち向かう島津は、全自動PCR検査装置の開発に取り掛かりました。

小型で低コストな全自動PCR検査装置

製品開発にあたり、主に次の四つが決定しました。一つは、島津の新型コロナウイルス検出試薬キットを使用して検査を簡便に行う。次に、4人分の試料を全自動で検査し、コンパクトで省スペースに設置できるようにする。そして、島津の分析装置の既存技術を活用して信頼性を担保し、開発期間を短縮する。最後に、普及のために装置の製造コストを低くする。これらの前提条件をクリアし、わずか半年という短期間で開発されたのが卓上型の全自動PCR検査装置です。日本での感染第3波直前の2020(令和2)年11月に発売されました。

価格は、中小病院やクリニックなどの小規模医療機関等でも導入しやすいように200万円を下回る低価格を実現。購入に際して公的助成が用意されたことも後押しになり、発売と同時に注文が殺到し、当初の想定をはるかに上回るバックオーダーが積み上がるほどでした。

現在、日本国内で2,000台以上の装置が医療機関などに行きわたっていることは、「医療の未来に貢献し続けたい」と願う島津にとって大きな意義を成しています。

全自動PCR検査装置
全自動PCR検査装置

早期診断と院内感染リスクに対して
回診用X線装置で現場の難題を解決

移動できる小型X線装置が活躍

新型コロナウイルスによるパンデミックに対して、島津の技術力が貢献した事例は、これらにとどまりません。事業の中核を成してきたX線装置もまた、逼迫する医療現場を支え続けた医用機器です。少し時を遡りましょう。

2003(平成15)年、中国でSARSウイルスが猛威を振るいました。医療機関から島津の回診用X線撮影装置が大至急で求められました。患者の呼吸器に症状が出ている場合、X線装置で肺の状態を検査します。感染力の強さが脅威ですから患者を検査室に移動させることなく、装置を移動させて隔離病棟や集中治療室などの現場でX線撮影ができるこの装置が求められたのです。

島津の回診用X線撮影装置は、人間の感性に沿った操作性、少々のことでは壊れにくい耐久性、作業の簡易性などで好評を得て、島津を代表する機器のひとつでした。切実な医療現場の要望に応えるため、感染と隣り合わせとなる医療機関での据え付けや運用のサポートを、感染予防に努めながら休日夜間をいとわずに行いました。

この装置は、2005(平成17)年に大きなブレークスルーを果たしました。デジタル検出式を用いてX線撮影後に直ちに画像が確認できる新製品を世界に先駆けて発売したのです。このシリーズは、現在に至るまで進化し続け、ユーザーから強い支持を得ています。

そして記憶に新しい新型コロナウイルスのパンデミックは、2019(令和元)年がその始まりでした。ウイルスが蔓延するなか、早期の診断体制を作るため、世界中から回診用X線撮影装置に注文が押し寄せることになりました。この要望に応えるため、島津の工場は通常の2倍もの増産体制を敷きました。医療現場ではサービス員が感染予防に細心の注意を払いながら装置の納入と引き渡しに従事しました。

災害現場でも存在感を発揮した島津のX線装置

回診用X線撮影装置は、2008(平成20)年に発生した中国の四川大地震の支援にもその功績を残しています。9万人近い死者・行方不明者を出した四川大地震の報を受け、島津は四川省の衛生庁に協力を申し出ると、X線装置の提供依頼を受けました。

負傷した人の骨折や頭部損傷などの診断を迅速に行うためには装置を移動させることができる回診用X線撮影装置が不可欠です。島津の現地法人が保有する在庫に加え、過去に納入した北京の大学病院からも借り受け、装置を現地に運び入れました。装置の据付作業や医療スタッフへの操作手順の教授など、現地入りしたサービス員たちは余震のなか、屋外で過ごしながら活動を続けました。震災から2週間あまりで数千名の診断に用いられました。

回診用X線撮影装置
回診用X線撮影装置
通常の2倍の増産体制を敷いた
通常の2倍の増産体制を敷いた