低炭素・循環型社会の構築への貢献

低炭素社会と循環型社会の構築への貢献
バイオマスからの
次世代リサイクル燃料
“バイオコークス”の開発


近代化された世の中で増え続ける二酸化炭素に代表される温室効果ガスと廃棄物。
「低炭素化」と「資源循環」という2つの課題の克服を目指して、次世代のリサイクル燃料を作り出す研究開発が進められている場面で、当社の装置も使用されています。
この持続可能な社会に向けた研究開発に携わる、近畿大学バイオコークス研究所 副所長の井田民男 准教授にお話を伺いました。

まずは井田先生のご研究のきっかけについてご紹介いただけますでしょうか。

私は2000年に近畿大学に赴任しました。その際、それまで行ってきた基礎研究から「人の役に立つ研究」をしたいと思い立ちました。ちょうどそれは日本政府が推進する「バイオマス・ニッポン総合戦略」に向けた議論が活発化している時期でもありました。
バイオマスとは生物由来の有機物全般のことですが、例えば木からエタノールを作ったり、ガス化して発電をしたり、といった研究が盛んに行われていました。そんな中で私は誰もやっていない「固体を固体として使う」という研究に取り組み、3年ほどを経て、ある程度の形が出来上がりました。
実は当初から固形燃料を作ろうとしていたわけではなく、原料となるバイオマスを圧縮して固めることで運搬効率を高め、輸送エネルギーの削減につながると見込んでいました。しかしこれではそんなに大きな効果もないと思っていた矢先、ふと「石炭コークスの代替になるのではないか」と気付きました。そこから“バイオコークス”という名称も誕生しました。

バイオコークス

バイオコークス

近畿大学バイオコークス研究所 副所長 井田民男 准教授

近畿大学バイオコークス研究所 副所長
井田民男 准教授

このバイオコークスはどのようにして作られるのでしょうか。

まず原料となるバイオマスを数mm程度の大きさにして、次にその水分値を10%くらいにします。これを筒の中に入れて、上から4tの力を加えながら180℃くらいの熱を加えると、筒の中で加熱されて生成された水蒸気のエネルギーを使って反応が起こり、バイオコークスが出来上がります。
同じバイオマス燃料でも、バイオエタノールはトウモロコシなどの食糧を原料としていますが、バイオコークスは、お茶やコーヒーのかす、リンゴジュースの搾りかすなど、利用されることなく廃棄されていたものを使うことができるという利点があります。また、100gの原料から100gのバイオコークスが作れますので、製造時のムダもありません。

バイオコークスの生成方法
バイオコークスの生成方法

2007年から量産化に向けた実験施設を北海道恵庭市に立ち上げて、実用化に向けた取り組みを進めていますが、製造前の工程が課題です。最も難しいのは木を原料とした場合で、まず粉砕した上で、木に含まれる50%の水分を乾燥させる必要があります。お茶かすやコーヒーかすだと粉砕は不要ですが、やはり乾燥は必要です。こうした前処理の工程があるほど、製造時のコストも高くなり、バイオコークスを作るためのエネルギーも増えてしまいます。唯一、前処理が不要なものとしてはそば殻があるのですが、これは枕の原料として重宝されているため、集めきれませんでした(笑)。
最近では、バイオコークスが製鉄工場の溶解炉で使われることから、使い捨てカイロに注目しています。使い捨てカイロはバイオマスではないですが、原料である活性炭などに加えて酸化した鉄粉も含まれているので、鉄源としての資源循環も可能です。

バイオコークスを使うことのメリットはどのように評価しているのでしょうか。

バイオコークスの原料となる植物資源は元々光合成によって作られたものです。そのため石炭コークスとは違って、燃焼時に発生したCO2が地球上で新たに増えた排出量としてカウントされません。そのため、石炭コークスをバイオコークスに置き換えた分が、CO2排出量の削減量となります。
石炭コークスは製鉄工場や火力発電所などで使用されていますが、その使用量の20%くらいはバイオコークスに置き換えることができると試算しています。例えば日本国内では、年間3,000万tの石炭コークスを製鉄工場で利用していますが、その20%だと600万tになります。さらに火力発電所でも7,000万tの石炭を使っていますので、その20%の1,400万tを置き換えると、合計で2,000万tの石炭コークスをバイオコークスにできるという計算になります。これはCO 2排出量としては6,000万tの削減に相当します。

さらなる効果として、雇用対策という面があります。日本は森林資源が豊富ですが、大阪府森林組合さんでは里山を復興させながらエネルギーを生み出そうという実証実験を大阪府高槻市で実施しています。また、乾燥時のエネルギーがほとんどかからない温帯地域の途上国では、バイオコークスを製造することでエネルギーを自給したり、外貨を獲得したりするというBOP*1ビジネスに展開する話も進んでいます。

*1 BOP:
Base of the Pyramid(ピラミッドの基盤)の略。
開発途上地域における低所得者層のことを意味する。

当社の装置はどのように使用されているのでしょうか。

今使っている装置は精密万能試験機「オートグラフ」*2に高温炉を備えたもので、鉄が溶ける溶解炉の中を再現した試験設備として特別に作っていただきました。これにより、溶解炉の中でバイオコークスがどの程度の強度を保つことができるか、という試験ができるようになりました。他にも、バイオコークスの燃焼時間にも関わる“比表面積”を分析するために自動比表面積・細孔分布測定装置「トライスター」*3を使って、原料が異なっていても燃焼性などの品質を予測評価できる方法を研究しています。
北海道のプラントでは、疲労試験機「サーボパルサ」 *4を応用して、原料を連続で製造装置に入れるための油圧装置も作っていただきました。これは本来の試験機の使い方とは違うかもしれませんが(笑)。

これから実用化に向けてどのような課題があるのでしょうか。

今は農業用ビニールハウスの熱源や、自動車のエンジンの鋳造部品を製造する炉の燃料として利用されていますが、製造設備を含めてもっと低コストにしなければ代替化はしてもらえません。技術的には、石炭コークスと同じくらい高温でも使える品質にしなければなりません。一方で、燃料としての利用に留まらず、素材としての利用も目指しています。
また、このバイオコークスを市場に出すためには、原料が変わったときに品質が変わってしまうため、製品としての“規格化”が必要となります。その際には島津さんの装置がこれからさらに役立つと思っています。

本日はありがとうございました。

井田 民男 氏

近畿大学バイオコークス研究所 副所長
博士(工学)准教授
井田 民男 氏

豊橋技術科学大学で博士(工学)を取得後、2000年に近畿大学理工学部機械工学科の講師に着任。2005年に米国ケンタッキー州ケンタッキー大学工学部機械工学科にて在外研究に携わり、2008年に同学科 准教授を経て2012年12月より現職。

※所属・役職などは、取材当時(2013年4月)のものです。

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