環境貢献製品の開発

製品を通じた環境保全・
環境改善への貢献


島津の製品には、電気機器や環境中に含まれている有害物質の検出や監視測定など、
機能・用途が環境保全や環境改善に直結している装置も少なくない。
島津ではこれらの製品を「環境貢献製品」と定義して、
技術開発を通じた社会への貢献の形として世の中に提供している。
今回は環境貢献製品の開発に関わる担当者に、
その特徴や開発の舞台裏について話を聞いた。

まず、環境貢献製品として開発・販売している装置としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

山下 私の所属する部門では、電気機器のRoHS指令※1やWEEE指令※2、自動車のELV指令※3といった主に欧州で使用が禁止・制限されているような有害物質を検出・測定する装置を開発しています。主な装置として「エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)」と呼ばれるものがあります。電子機器や自動車は金属や樹脂などの非常に多くの部品等で作られているため、ほぼ全ての製造業と関連してくる装置です。
中上 我々の部門では、大きく分けてガス分析計と水質分析計という2種類の装置を扱っています。ガス分析計は、大気汚染防止法で規制されている排ガスを分析して、規制値内であるかどうかを明らかにする装置です。また、水質分析計は水質汚染防止法に関わる国の規制や工場などで自主的に定めた基準値を満たしているかどうかを分析するための装置です。排水中のリンや窒素、有機物の量を分析して、水の汚染の度合いを評価することができます。

※1)RoHS指令:欧州の「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限(Restriction of certain Hazardous Substances)に関する指令」の略称。
※2)WEEE指令:欧州の「廃電気電子機器(Waste Electrical and Electronic Equipment)に関する指令」の略称。
※3)ELV指令:欧州の「廃棄自動車(End-of Life Vehicle)に関する指令」の略称。

分析計測事業部 X線/表面ビジネスユニット
プロダクトマネージャー 山下 昇

分析計測事業部 環境ビジネスユニット
プロダクトマネージャー 中上 英人

それぞれの装置が開発されることになった経緯を教えていただけますでしょうか?

中上 先ほど紹介した水質分析計のうち「全有機体炭素計(TOC計)」について紹介します。これは、水中の有機物の量を「炭素の量」で評価する装置で、「水が綺麗か、汚いか」という基本的な分析を手早く、確実に実施することができるので、水の汚染度合いを測定するために幅広く使用されています。一方で、環境基準や排水基準など、公的な測定項目としてはほとんど採用されていないこともあり、自主的な水質の監視用途が中心です。
山下 EDXは1998年に市場に投入されましたが、当時は金属やセラミックなどの無機原料、材料の分析に使用されていました。非破壊で簡便に元素分析ができるため、徐々に最終製品に近いものにも適用されてきました。ちょうどその当時、カレーに砒素が混入されるという事件が発生し、その砒素を簡便に分析できるということから、全国の救命救急センターに導入されました。その後、2004年くらいから電機業界のRoHS指令への対応で有害物質のスクリーニング分析に使用され、大きく成長しました。例えばノートパソコン1台でも1,000個くらいの部品で構成されており、これを全て分析することはできないので、簡便な分析法ということで導入されてきたのでしょう。

最新の装置の特徴としては?

中上 主に研究用途で使われているラボ用TOC計は、24時間連続で運転するようなものではなく、日中のみ使用することが多い装置です。そのため、前日にタイマーをセットするとスリープモードに入り、翌日設定した時刻までに装置を安定化させてすぐに分析に使用できるという機能を元々搭載していました。今回はこのスリープモード時の待機電力を大幅に削減し、省電力を徹底しました。元々、当社のTOC計は保温性や熱効率などの省エネ性能は高かったのですが、従来機と比べてさらにエネルギー消費量を36%削減しました。島津で定めたエコラベルを取得していることもあり、国内外のお客様にアピールするポイントにもなっています。
山下 RoHS指令やELV指令によって電機・自動車業界に多く導入していただきましたが、EDXは各社の購買部や工場の製造現場などで使われているというのが特徴です。最近では部品メーカーなどの出荷基準に応じた値を設定して、測定位置に試料を置いてスタートボタンを押せば、合格か不合格かを誰でも簡便に判定できるようにした機種も投入しています。白衣を着て実験室の中で試験管を振っているようなイメージとはちょっと異質なものかもしれないですね。

今まで開発してきた中で、特にご苦労の多かった点などはどのような点があるでしょうか。

山下 1998年頃の発売当初のEDXは、ほとんどが微量の分析というより主成分をすばやく分析するというのが目的で、1,000ppm(0.1%)程度までの成分を分析するのが中心でした。その後、10ppm(0.001%)ほどの微量成分でも分析できるように改良を重ねてきました。主成分から微量な有害成分まで分析できるようになったのは、当社の製品が市場に出てからではないでしょうか。
中上 TOC計の特長は水中の有機物を簡便かつ正確に測れることですが、「ちゃんと測り続けられる」という点も重要です。言葉にしてしまうと当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、例えば工場系の排水の分析では、過酷な条件下で長時間、安定的に稼動することが要求され、またお客様もその点を評価されます。

他社製品と比べたときの性能で、特に当社の製品が有意な点は何でしょうか。

山下 EDXではやはり感度でしょうか。当初は操作が難しい、あるいはプレスや切断といった前処理が必要だったりもしましたが、分析性能を保ったまま現場の方に簡単に使用していただけるように改良を重ねてきました。ようやく分析装置から検査装置のレベルに至りつつあるかと思います。
中上 性能だけで言えば、当社のラボ用TOC計は、他社と比較して高い基本スペックを保ち続けています。オンラインTOC計も実稼動における頑丈さには自信がありますし、さらにさまざまな環境に耐えられるようなオプションも豊富に用意しています。

最近の法規制や市場の変化はどのように見ていますか?

山下 RoHS指令そのものは、当面、規制物質などに大きな変更はないでしょうが、業界での自主規制も強化されており、新たなビジネスチャンスもあると見ています。また、大手の電機メーカーが特に力を入れているバッテリーや電池などのエネルギー分野ではさらに活躍できるでしょう。また、最近では製造業のみならず流通業などでのニーズも拡大しています。例えば、玩具、日用品、教材、景品・販促品などからも鉛やクロムなどの有害物質が検出される可能性があることから、消費者に対して安全性を担保する1つの対応になりつつあります。
中上 TOC計は公的な規制値に関わるものではありませんが、扱いやすく、確実であるということで、自治体などでもここ10年以上使用されています。将来的には環境規制の1つの指標として採用されていくのでは、という期待はあります。一方で企業の自主規制の動きは先進国を中心に確実に進展しており、工程の上流で排水を監視することによる環境事故の防止措置として実施されています。

最後に、将来的な装置の展望をどのようにお考えでしょうか。

山下 昔のEDXは分析室に置くようなものでしたが、今のように購買部などに置くと、ファンの音にも静粛性が求められたり、通常の分析室のようなメンテナンススペースがとれないといった問題もあります。ユーザが変わってきたことによる変化ですね。また、分析性能を高い水準で維持する一方、新興国などでも簡便に使えるという両面のニーズに対応しなければなりません。世界的な流れとしては、中東・アフリカへの展開に加え、さらなる可搬性・コンパクト性も1つの視点ですね。
中上 オンラインTOC計は、お客様の使用環境に応じた要望に常に応えてきました。さらなるメンテナンス性の向上を行います。また、今は分析装置ですが、将来的には「センサー」とも言える、安定的に簡単に誰でも分析できるような装置になっていくでしょうね。分析の性能を保ちつつ、現在使用しているガスなども極力使わない状態で簡単なシステムにしていくのだろうと思います。当面は中国やインドなどの新興国をはじめ、東南アジア、中東など、これから環境規制が進む地域が次のターゲットになるでしょうね。

本日はありがとうございました。

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