技術トピックス

自動車エンジンのシリンダ内における温度とCO2濃度を高速かつ同時に計測する新技術を開発

自動車などで広く使用されるエンジンでは、燃焼状態が想定と異なると最終的なエンジンの出力性能や燃費性能、環境性能に大きく影響します。そこで量産型エンジンにも適用できる実用的な構成で、シリンダ内の温度およびCO2濃度を同時に高速計測可能な技術を開発しました。

この技術の特長としては、センシングするプローブ(以下、センサプローブ)が小型で高い耐久性を持つことが挙げられます。センサプローブの先端に備える直径5mmの検出部分をシリンダ内へ約10mm挿入し、その検出部分に複数のレーザ光を通過させることで、検出部分にある気体中のH2OおよびCO2の吸光度から温度とCO2濃度を算出します。

エンジン内部に挿入するセンサプローブ先端の検出部分は、レーザ光を反射させるミラーやレーザ光を透過させる窓といった光学部品で構成されます。また、専用に開発されたファイバ構成部品がレーザ光をセンサプローブ先端の検出部分まで送り、また同じファイバ構成部品が反射して戻ってきたレーザ光を光検出用素子まで導きます。

一般的な自動車エンジンの点火プラグ取り付け穴サイズはM12ですが、この技術開発により、上記光学部品と市販の燃焼圧センサとをあわせてM12サイズの点火プラグに組み込むことを実現しました。

一方耐久性の面では、センサプローブの先端検出部分を高温高圧領域にも耐えうる構造と材質にすることで、実際のエンジン開発現場においても長時間計測が可能なものとしました。

計測原理は赤外吸収分光法の一種である波長可変半導体レーザ吸収分光法(TDLAS: Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy)と呼ばれる手法を採用しています。この手法は他成分ガスの干渉影響が極めて少ない手法であるため、従来型の赤外ガス分析計のようにガスをサンプリングして干渉成分を除去するといった前処理をする必要がなく、応答遅れの無い「その場計測」をすることが可能です。

本技術で採用するレーザ光源には、H2OやCO2のある特定の吸収波長において発振する近赤外領域の半導体レーザを複数採用しています。温度計測については、複数の半導体レーザを用いて、温度特性が異なる複数のH2Oの吸収スペクトルを同時計測することで温度を算出します。CO2濃度計測においてもCO2の吸収スペクトル計測用レーザを用いて得られる吸光度と、複数のH2Oの吸収スペクトル計測から得られたガス温度、それから燃焼圧センサから得られる圧力を用いてCO2濃度を算出します。

上述のように温度およびCO2濃度計測のいずれも光学的手段でガスサンプリングすること無く行っているため、計測周期は50μsと極めて高速です。そのためエンジンの回転周期に対して充分な時間分解能を有し、吸気行程から圧縮行程に至る「点火直前までの温度と残留排ガス量としてのCO2濃度」を時々刻々と計測することが可能です。

実際のエンジンにおいては燃焼開始直前におけるガス温度とCO2濃度を制御することが、その直後に起きる燃焼の制御という点で極めて重要になります。本技術を適用すれば、温度について燃焼開始直前における温度範囲の多くをカバーできる上限950Kの計測が可能です。またCO2濃度についても0から100%までの濃度を計測でき、エンジンの運転制御によって幅広く変化する残留排ガス量を正確に知ることができます。

本技術が本格的に実用化すれば、燃焼状態の詳細な把握と、燃焼制御の高度化が今以上に進み、自動車エンジンにおいてさらなる走行性能と環境性能との高度な両立が期待できます。

センサプローブ取り付け概略図

センサプローブ取り付け概略図



センサプローブ模式図

センサプローブ模式図



温度計測原理

温度計測原理



エンジンでの計測例(横軸左端:吸気行程開始、右端:圧縮行程最後)

エンジンでの計測例(横軸左端:吸気行程開始、右端:圧縮行程最後)



計測システム外観

計測システム外観

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