技術トピックス

迅速がん診断支援装置の実用化開発

本システムは科学技術振興機構(JST)先端計測分析技術・機器開発プログラムにおいて開発している装置であり、島津製作所の持つ質量分析技術に、山梨大学が開発した新しいイオン化技術である探針エレクトロスプレー法(Probe ElectroSpray Ionization, PESI)と、早稲田大学が開発した統計的学習機械(dual Penalized Logistic Regression Machine, dPLRM)を組み合わせてシステム化したものである。
患者から採取した2ミリ角程度の組織片をプレートにセットし、先端径が数百ナノ(ナノは10億分の1)メートルの探針を刺し、先端に付着した数ピコ(ピコは1兆分の1)リットルというごく微量の試料に高電圧をかけてイオン化し、そこに含まれる成分の質量分析を行う。
このイオン化手法は極微量の試料で測定できること、夾雑物によるイオン化のサプレッション効果が少ないため、試料の前処理がほとんど不要であることなど、診断用途に優れた特徴を持つ。
このイオン化法を用いて事前に得られた既知のマススペクトルデータを蓄積し、がん特有の潜在的パターンを学習したdPLRMが、新規に得られた未知データに対してがんの存在する確率を自動判定する。
dPLRMは多次元空間で複雑局面境界を設定して確率的判別を可能とするアルゴリズムであり、特にヒトがん組織でのマススペクトルのように著しく多次元かつ複雑なクラスター構造を持つデータの判定には大変適した方法である。
これらのイオン化法と判定アルゴリズムを当社の高速質量分析技術と組み合わせることで、従来の術中迅速病理診断では標本の作成から顕微鏡による観察、診断まで30分程度かかるところを、本システムでは分析開始から約2分という短時間で結果を得ることができる。
これまでに、腎細胞がん、肝細胞がんのデータを蓄積して80%以上の高い判定精度が得られており、さらなるデータ蓄積とアルゴリズム改良による判定精度向上と、適用症例の拡大に取り組んでおり、ソフトウェア・ハードウェア改良による操作性向上についても進めている。
複雑な前処理が不要で操作も簡単なため、専門の医師やオペレーターでなくても分析が可能となることを期待しており、検査室、手術室、内視鏡室等において、迅速かつ高精度な質量分析という別のアプローチから病理医による病理診断を支援する装置を目指している。

システムの概念図

システムの概念図

プロトタイプの写真

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