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2016年12月8日 | プレスリリース
平成28年度島津賞受賞者決定
-研究開発助成は12件を選定-
公益財団法人 島津科学技術振興財団(理事長 井村裕夫)は12月7日に開催した当財団理事会において、第36回(平成28年度)島津賞受賞者および研究開発助成金受領者を決定しましたのでお知らせいたします。
当財団は、科学技術に関する研究開発の助成および振興を図る目的で昭和55年に島津製作所の拠出資金により設立され、平成24年4月に公益財団法人に移行しました。基本財産は約10億円です。
島津賞は、主として科学計測の基礎的な研究において、著しい成果をあげた功労者を表彰するものです。また、研究開発助成は、主として科学計測の基礎的な研究開発に携わっている若手の研究者を助成するものです。
第36回(平成28年度)島津賞受賞者および研究開発助成金受領者は次の通りです。
1.島津賞(1名)
島津賞推薦依頼学会より推薦のあった中から、当財団選考委員会および 理事会にて、受賞者1名を選出しました。
受賞者
理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター
副センター長 ピエロ・カルニンチ 殿
(島津賞として、表彰状・賞牌・副賞500万円を贈呈)

研究業績 | : | 転写開始点解析による埋もれた遺伝子とゲノム機能の解明 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
推薦学会 | : | 日本分子生物学会 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
内 容 | : |
生物の全遺伝情報をゲノムと呼び、その実体はDNA1)の配列(塩基配列)である。ヒトゲノムでは全塩基配列の約2%に、生体を構成するタンパク質の設計情報(アミノ酸配列)が書かれている。DNAの塩基配列は必要に応じて mRNA2)にコピー (転写)され、mRNAの配列情報を基に核外にあるリボソーム3)上で各種タンパク質が合成される。従って、ゲノムのどの領域がどのように転写されるかのメカニズムを理解することがゲノム機能の解明には欠かせない。ゲノム機能の解明は、生命科学の基礎研究にはもちろんのこと、今後の医療関連産業にも大きく寄与することが期待されている。 カルニンチ氏は1995年に来日し、理化学研究所の林崎良英主任研究員(現プログラムディレクター)が主宰するゲノム科学研究室に所属。以来、同研究所において、ゲノムから転写されるRNAの網羅的な解析を可能にする技術の開発に取り組み、完全長cDNA作製技術やCAGE法を開発した。特にCAGE法は、転写開始点に絞ってRNAの配列とコピー数を測定することで、いつどこでどの遺伝子がどれくらい発現しているかをゲノム全体に渡って短時間に測定できる、画期的なRNA解析手法である。カルニンチ氏はこれらの技術を駆使し、ゲノムDNAの多くがRNAに転写され、そのほとんどがタンパク質の設計情報を持たないノンコーディングRNA(ncRNA)4)であることなど驚くべき発見を行った。現在、CAGE法はFANTOM5)、ENCODE6)など国際的なゲノム解析プロジェクトに必須の技術として採用されている。
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2.研究開発助成 (12件、助成金総額 1,200万円)
当財団のホームページ等にて公募を行い、応募のあった中から、当財団選考委員会および理事会にて研究開発助成金受領者12名を選出しました。
助成対象となった研究は、先端技術に関するもので、いずれも今後その成果・発展が期待されます。
研究者(五十音順) | 研究題目 | 助成金 | |
---|---|---|---|
1 | 大阪大学 大学院基礎工学研究科 准教授 岡本 行広 |
脂質ナノ膜場を分離場とする革新的キラル分離法の開発 | 100万円 |
2 | 京都大学 白眉センター 特定准教授 金 玟秀 |
1分子レベルでのユビキチン修飾システムの計測とダイナミクス解明 | 100万円 |
3 | 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 准教授 坂口 昌徳 |
質量分析計と光遺伝学による眠気の分子実体の同定 | 100万円 |
4 | 福井県立大学 生物資源学部 生物資源学科 准教授 平 修 |
ナノ微粒子質量分析法による分析病理法の確立と診断への応用 | 100万円 |
5 | 名古屋工業大学 工学部 物理工学科 助教 田中 雅章 |
メスバウアー分光測定による強磁性体/半導体接合界面の局所磁性評価 | 100万円 |
6 | 京都大学 大学院工学研究科 助教 内藤 豊裕 |
微小構造体を用いたポンプ一体型カラムの性能に影響を与える構造的要因の解明 | 100万円 |
7 | 群馬大学 大学院医学系研究科 准教授 中島 崇仁 |
質量分析装置を用いた臨床用ガドリニウム造影剤の体内イオンバランスに及ぼす影響 | 100万円 |
8 | 熊本高等専門学校 生物化学システム工学科 准教授 二見 能資 |
赤外吸収強度による有機溶媒中のアルコール分子のプロトン供与性の計測法の構築 | 100万円 |
9 | 大阪大学 大学院工学研究科 助教 松山 智至 |
全反射結像ミラーを使った結像型蛍光X線顕微鏡の開発 | 100万円 |
10 | 京都大学 大学院工学研究科 助教 森本 大智 |
世界最高感度レオロジーNMRの開発と応用 | 100万円 |
11 | 大阪大学 大学院理学研究科 助教 薮田 ひかる |
赤外放射光マイクロトモグラフィー開発による小惑星上の有機物と水の3次元分布解明 | 100万円 |
12 | 東北大学 電気通信研究所 准教授 山末 耕平 |
走査型非線形誘電率顕微鏡に基づくナノスケール自発分極定量測定法の開発 | 100万円 |
なお、島津賞表彰式・研究開発助成金贈呈式、並びに島津賞受賞記念講演は、次の通り行います。
日 時 | : | 平成29年2月24日(金) | |
表彰・贈呈式 | 14:00~14:50 | ||
島津賞受賞記念講演 | 15:00~15:50 | ||
懇親会 | 16:00~17:00 | ||
場 所 | : | 京都ホテルオークラ(京都市中京区河原町御池) |