ニュース

報道関係の皆様からのお問い合わせはこちら

掲載されている内容はすべて発表日当時のものです。その後予告なしに変更されることがありますのであらかじめご了承ください。

2015年12月9日 | プレスリリース 平成27年度島津賞受賞者決定
-研究開発助成は12件を選定-

公益財団法人 島津科学技術振興財団(理事長 井村裕夫)は12月8日に開催した当財団理事会において、第35回(平成27年度)島津賞受賞者および研究開発助成金受領者を決定しましたのでお知らせいたします。
当財団は、科学技術に関する研究開発の助成および振興を図る目的で昭和55年に島津製作所の拠出資金により設立され、平成24年4月に公益財団法人に移行しました。基本財産は約10億円です。
島津賞は、主として科学計測の基礎的な研究において、近年著しい成果をあげた功労者を表彰するものです。また、研究開発助成は、主として科学計測の基礎的な研究開発に携わっている若手の研究者を助成するものです。
第35回(平成27年度)島津賞受賞者および研究開発助成金受領者は次の通りです。

1.島津賞

当財団指定学会に推薦を依頼し、推薦のあった中から、当財団選考委員会および 理事会にて、受賞者1名を選出しました。

受賞者

理化学研究所
脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チーム
光量子工学研究領域 生命光学技術研究チーム
チームリーダー 宮脇 敦史(みやわき あつし)殿
 

宮脇 敦史殿
研究業績 新しい蛍光タンパク質の創造による生命メカニズムの解明研究
内  容

生命メカニズムの理解は近年著しい発展を遂げているが、それを支える重要なツールが蛍光タンパク質1)である。遺伝子工学を利用して、注目する細胞や分子を蛍光タンパク質でラベルすることにより、生きた個体や細胞の中で起こる様々な現象を動的に観察できるようになった。蛍光タンパク質と言えば、下村脩博士発見のオワンクラゲGFP2)(2008年ノーベル化学賞)が有名であるが、宮脇博士は、オワンクラゲGFPに加え、自ら日本近海棲息の生物から遺伝子クローニング3)した多くの蛍光タンパク質を改変・活用して、カルシウム、細胞周期、代謝、自食作用など基本的生命現象を可視化する様々なセンサーを世界に先駆けて開発してきた。成果物の普及は学術分野に留まらず、医療、創薬などの産業分野にも着実に拡がっており、たとえば癌、アルツハイマー病などの変性疾患、先天奇形、黄疸などの診断技術に活用されつつある。また、蛍光タンパク質の新規特性に関して学際的な研究成果をあげてきた。たとえば光照射によって蛍光の色や明滅が変わる特性の発見は、蛍光標識密度を制御する技術に発展し、超解像光学顕微鏡4)(2014年ノーベル化学賞)の開発に著しい貢献を果たした。

宮脇博士は、80年代(学生時代)より、FRET5)技術のライフサイエンスへの適用に関する構想を抱き、90年代より、蛍光タンパク質を中心にしたバイオイメージング技術開発に関して世界をリードする研究成果を次々にあげている。以下(次頁)に代表的な研究成果を記す。

1. カリフォルニア大学サンディエゴ校ツエーン博士(2008年ノーベル化学賞)の研究室に留学中(1995~1998年)、GFP技術とFRET技術とを融合し、蛍光カルシウムセンサー「カメレオン」を開発。遺伝子にコードされるセンサーとして世界初の成果。カルシウムは、細胞が外界変化に応じて濃度が変化するイオンであり、ほぼ全ての生命現象に関わっている。
2. 1999年、理化学研究所脳科学総合センター赴任後、多数のGFPの改変体を開発し、世界中の研究室に配布してきた。2002年には、世界で最も明るい「ヴィーナス」を開発した。
3. 日本近海に棲息する海洋動物から、新しい蛍光タンパク質を多数開発してきた。2002年にヒユサンゴから遺伝子クローニングした「カエデ」は、紫(外)光によって緑色から赤色へ不可逆的に変化するもので、注目する細胞や分子を光でマーキングして追跡することを可能にした。一方、2004年にアナキッカサンゴから開発した「ドロンパ」は、紫色と青色の光照射で、それぞれ蛍光のオンとオフを可逆的に往来する性質をもつ。カエデとドロンパは、光スイッチング蛍光タンパク質の先駆けとして、超解像光学顕微鏡(2014年ノーベル化学賞)の開発に寄与した。
4. 2008年、細胞周期6)の進行をリアルタイムに可視化する「フーチ」を開発し、癌の浸潤・転移を可視化する技術として応用研究を進めている。2013年には、レチノイン酸7)センサー「ゲプラ」を開発し、動物の形態形成におけるレチノイン酸濃度の勾配の存在を証明した。また2013年には、ニホンウナギから緑色蛍光タンパク質「ユーナジー」を開発した。ユーナジーは赤血球崩壊後のヘム代謝産物の一つビリルビン8)が結合して蛍光を発するので、血清ビリルビン濃度を簡単、迅速、高感度に測定する新技術を創り出せる。新生児黄疸診断薬の新規開発が進んでいる。
5. 蛍光タンパク質の波長は可視域にある。哺乳類動物の組織は不透明で、可視光を用いる技術には、深くまで観察できないという問題が伴う。そこで、蛍光タンパク質の蛍光を生かしたまま固定生体組織を透明化する技術として、尿素を主成分にした「スケール」試薬を開発した(2011年)。アルツハイマー病患者死後脳におけるアミロイド斑9)の分布の3次元再構成に成功している。
このように、独自の蛍光タンパク質およびセンサーを数多く創造し生命科学分野で世界をリードしてきた。バイオイメージング技術の開発研究に関する業績は、科学計測およびその周辺の領域における基礎・応用研究に著しく貢献するものとして高く評価される。
1) 蛍光タンパク質:遺伝子導入による蛍光標識を可能にするタンパク質。ペプチドから発色団が出来るものとして、クラゲやサンゴなどに由来する蛍光タンパク質が有名。
  2) 緑色蛍光タンパク質(GFP):下村脩博士(2008年ノーベル化学賞受賞者)が60年代初頭にオワンクラゲから発見、精製したタンパク質。最初の実用的な蛍光タンパク質となった。
  3) 遺伝子クローニング:タンパク質をコードする遺伝子を獲得すること。
  4) 超解像光学顕微鏡:光の回折限界を超えて空間分解能を上げて細かい構造を観察する光学的技術。
  5) FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer):蛍光分子Aと分子Bが適当な角度で近接し、Aの蛍光スペクトルがBの吸収スペクトルと重なる場合、Aの励起エネルギーがBに移動する現象。
  6) 細胞周期;分裂後の細胞が次に分裂するまでが一細胞周期。途中にDNA合成期(S期)がある。
  7) レチノイン酸:ビタミンAの代謝産物の一種。細胞の分化を促す効果を持つ。
  8) ビリルビン;赤血球に含まれるヘモグロビンの代謝産物の一種。この量が異常に増えると黄疸症状が現れる。血清ビリルビン濃度は、一般検診で血液や肝臓機能を評価する指標の一つ。
  9) アミロイド斑:加齢によってアミロイドβと呼ばれるタンパク質が異常凝集して形成される。

2.研究開発助成 (12件)

当財団のホームページ等にて公募を行い、応募のあった中から、当財団選考委員会および理事会にて研究開発助成金受領者12名を選出しました。
助成対象となった研究は、先端技術に関するもので、いずれも今後その成果・発展が期待されます。

(五十音順)

  研究者(五十音順) 研究題目 助成金
1 海洋研究開発機構
高知コア研究所
グループリーダー代理 伊藤 元雄
地球外有機物に記された太陽系史を読み解く 100万円
2 千葉大学
大学院工学研究科
准教授 梅野 太輔
生体分子結合タンパク質のセンサ素子化とバイオセンサの創出 100万円
3 名古屋工業大学
大学院工学研究科
准教授 北川 慎也
超低温液体クロマトグラフィーの開発とその微細分子構造認識分離への応用 100万円
4 東京大学
生産技術研究所
助教 久米村 百子
MEMS・マイクロ流体デバイスを用いた細胞の機械特性評価 100万円
5 北海道大学
大学院理学研究院
准教授 小林 厚志
相対湿度の三次元可視化のための発光性ナノ集積体の構築 100万円
6 名古屋大学
大学院工学研究科
助教 竹家 啓
ガスハイドレートのテラヘルツ分光評価 100万円
7 東北大学
多元物質科学研究所
助教 豊田 光紀
レーザープラズマ光源を用いた実用極端紫外線顕微鏡の開発 100万円
8 大阪大学
大学院理学研究科
准教授 新見 康洋
2次元原子層超伝導体を用いた高効率スピン変換とその応用 100万円
9 広島大学
大学院総合科学研究科
助教 布目 陽子
ソフトプラズマイオン化質量分析法を用いた有機エアロゾルの直接計測 100万円
10 大阪大学
大学院情報科学研究科
准教授 松田 史生
質量分析装置を用いた細胞内代謝フラックス測定法の高精度化 100万円
11 大阪市立大学
大学院医学研究科
教授 水関 健司
自由行動中の動物の脳から細胞外記録される主細胞を投射先によって分類する方法の開発 100万円
12 埼玉医科大学
国際医療センター
准教授 山根 登茂彦
ホルモン受容体PETによる乳癌の新規治療ストラテジー開発 100万円

なお、島津賞表彰式・研究開発助成金贈呈式、並びに島津賞受賞記念講演は、次の通り行います。

日 時 平成28年2月16日(火)
    表彰・贈呈式 14:00~14:50
    島津賞受賞記念講演 15:00~15:50
    懇親会 16:00~17:00
場 所 京都ホテルオークラ(京都市中京区河原町御池)

報道関係の皆様からのお問い合わせはこちら(公益財団法人 島津科学技術振興財団)