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2013年12月5日 | プレスリリース 平成25年度島津賞受賞者決定
-研究開発助成は12件を選定-

公益財団法人 島津科学技術振興財団(理事長 井村裕夫)は12月4日に開催した当財団理事会において、第33回(平成25年度)島津賞受賞者および研究開発助成金受領者を決定しましたのでお知らせいたします。
当財団は、科学技術に関する研究開発の助成及び振興を図る目的で昭和55年に島津製作所の拠出資金により設立され、平成24年4月に公益財団法人に移行しました。基本財産は約10億円です。
島津賞は、主として科学計測の基礎的な研究において、近年著しい成果をあげた功労者を表彰するものです。また、研究開発助成は、主として科学計測の基礎的な研究開発に携わっている若手の研究者を助成するものです。
第33回(平成25年度)島津賞受賞者および研究開発助成金受領者は次の通りです。

1. 島津賞

当財団指定学会に推薦を依頼し、推薦のあった中から、当財団選考委員会および 理事会にて、受賞者1名を選出しました。

受賞者

金沢大学 理工研究域 数物科学系
教授  安藤 敏夫(あんどう としお) 殿

安藤 敏夫殿
研究業績 高速原子間力顕微鏡の開発とそのタンパク質分子への適用に関する研究
内  容

タンパク質は、心臓拍動、脳の活動、細胞分裂、細胞内の物質輸送、遺伝情報の読み取りなどすべての生命現象を司る分子群であり、その分子の働く仕組みの解明は生命科学の最重要課題の一つです。その解明に向け、タンパク質分子の構造解析と、動的挙動の解析が行われてきました。構造解析には、X線結晶構造解析法、電子顕微鏡法などが用いられてきましたが、得られる情報は静止した分子構造に限られていました。一方、動的挙動は、蛍光色素で標識したタンパク質分子の輝点を、蛍光顕微鏡で追跡して推測していました。しかし、この方法ではタンパク質分子そのものの動的挙動を直接観察することができず、新しい観察技術の開発が強く望まれていました。
原子間力顕微鏡(AFM)1)は、液中にある生体試料をナノメートル2)の解像度で直接可視化できる唯一の顕微鏡であるため、上記のタンパク質分子の動的挙動を観察する有力な候補でしたが、そのイメージング速度は極めて遅く、一つの画像を撮るのに分のオーダの時間を要していました。このため、タンパク質分子そのものの動きをリアルタイムに観察するには、桁違いの高速化が要求されました。

安藤敏夫氏は、1993年よりAFMを高速化する研究開発に着手し、AFM装置のキーコンポーネントであるスキャナの新規開発、微小カンチレバー・試料間の接触を高感度かつ高速に検出する振幅計測回路、微小カンチレバー制御方法の開発などを進めていきました。その結果、2001年の初期装置を経て、さらに様々な改良を重ね、ついに2008年に世界最高性能の高速AFM装置を完成させました。この新規な顕微鏡は、1~2ナノメートルの空間分解能、数十ミリ秒3)の時間分解能、低侵襲性4)を備えており、タンパク質分子そのものの動きのリアルタイム観察を世界で初めて可能にしました。安藤氏は、その顕微鏡を用い、生命科学の分野で数々の画期的な成果を挙げてきました。例えば、アクチンフィラメント5)上を2本足で歩くミオシンV6)の運動メカニズム解明、タンパク質モータF1-ATPase7)の回転の仕組みの解明、バクテリオロドプシン8)の光励起に伴う構造変化の発見、セルロース分解酵素によるセルロース分解の機構と分解速度低下の原因解明などが有名です。
安藤氏は、生きた細胞で起きる様々な動的な現象に高速AFMの適用を拡大しつつあり、基礎研究へのさらなる貢献が期待されます。また、高速AFMの技術は、今後、固液界面で起きる腐食、触媒反応、電池に代表される電気化学反応など様々な分野のナノメートル領域の現象の解明に広く役立つことも期待されます。

上記の革新的な顕微鏡技術開発とそれを用いた研究の業績は、科学計測およびその周辺の領域における基礎研究において著しい成果を挙げたものとして高く評価されます。

1) 原子間力顕微鏡(Atomic force microscope, AFM):微小な鋭い針(探針)を試料表面上ないしはそのごく近傍に沿って走査させ、探針に働く原子間力を基に試料の表面形状を画像化する顕微鏡。原子スケールの分解能が得られること、電子顕微鏡などと違って大気中あるいは液体中でも測定できることが特徴
  2) ナノメートル:10-9m(1mmの100万分の1)
  3) ミリ秒:10-3秒(1秒の1000分の1)
  4) 低侵襲性:試料の構造や機能に与える影響が少ないこと
  5) アクチンフィラメント:アクチンは収縮タンパク質の1つ。アクチンフィラメントは細胞内で繊維状構造を作る細胞骨格の1つで、アクチン分子が2重らせんで重合したもの
  6) ミオシンV:筋肉の主要な構成成分で、筋原繊維タンパク質の約60%を占めるミオシンIIに代表される20種類以上あるミオシンの一種で、細胞内で物質輸送を担っている
  7) F1-ATPase:アデノシン三リン酸(ATP)合成酵素の一部
  8) バクテリオロドプシン:光のエネルギーで水素イオンを輸送する膜タンパク質

2. 研究開発助成 (12件)

当財団のホームページ等にて公募を行い、応募のあった中から、当財団選考委員会及び理事会にて研究開発助成金受領者12名を選出しました。
助成対象となった研究は、先端技術に関するもので、いずれも今後その成果・発展が期待されます。

(五十音順)

  研究者 研究題目 助成金
1 東京大学
大学院新領域創成科学研究科
助教 一柳 光平
ピコ秒時間分解X線回折温度計測によるナノスケール界面熱伝達ダイナミクスの解明 100万円
2 大阪大学
大学院医学系研究科
助教 鎌田 佳宏
糖鎖技術を用いた新規非アルコール性脂肪性肝炎鑑別・病期診断バイオマーカーの開発 100万円
3 京都大学
大学院工学研究科
准教授 久保 拓也
高通水性スポンジ状分離剤を用いたバイオ医薬品精製の高効率化 100万円
4 九州大学
大学院工学研究院
准教授 財津 慎一
放射性水素同位体の高感度リアルタイム検出法の開発 100万円
5 慶應義塾大学
理工学部化学科
准教授 末永 聖武
海洋産マクロリド、ビセリングビアサイドの細胞内動態解析 100万円
6 福井大学
高エネルギー医学研究センター
准教授 辻川 哲也
分子イメージングを用いたエストロゲンの神経保護作用に関する研究 100万円
7 (独)日本原子力研究開発機構
量子ビーム応用研究部門
研究副主幹 中川 洋
非干渉性中性子非弾性散乱による埋もれた界面の水和状態と揺らぎの非侵襲計測法の確立 100万円
8 大阪大学
免疫学フロンティア研究センター
助教 西川 恵三
細胞内代謝産物に対する新規可視化法の開発によるエピゲノム動態の解析 100万円
9 大阪大学
大学院工学研究科
准教授 馬場 健史
超臨界抽出分離技術を用いた次世代食品安全性評価システムの開発 100万円
10 東京工業大学
大学院理工学研究科
准教授 松下 祥子
ナノ空間の粘性流体を利用したプラズモンセンシングデバイス 100万円
11 京都大学
物質-細胞統合システム拠点
研究員 松田 孝彦
哺乳類網膜の内在性蛋白質の標識とイメージング技術の開発 100万円
12 京都大学
大学院医学研究科
助教 山田 実
脳MRIと身体活動量に基づくアルツハイマー病移行を推定するアルゴリズムの作成 100万円

なお、島津賞表彰式・研究開発助成金贈呈式、並びに島津賞受賞記念講演は、次の通り行います。

日 時 平成26年2月17日(月)
    表彰・贈呈式 14:00~14:50
    島津賞受賞記念講演 15:00~15:50
    懇親会 16:00~17:00
場 所 京都ホテルオークラ(京都市中京区河原町御池)

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