島津のダイバーシティ

社員インタビュー

どうせやるなら
おもろい方へ
岡野 雅通
経営戦略室グローバル戦略ユニット
環境経営のスペシャリスト

ジャケットの襟元を飾るカラフルな木製のピンバッジ。最近社内でもつけている人を見る機会が増えた。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)への賛同を示すものだ。

「優しい感じで制服のワンポイントにちょうどいいと社員にも好評です。木で作ったのが良かったかな」
と話すのは、経営戦略室グローバル戦略ユニットのマネージャー岡野雅通さん。島津オリジナルのSDGsバッジの仕掛け人だ。

「今も正式な組織はないんですが、経営戦略室のミッションの中にCSRやSDGsの推進はあるので、僕にしてみたら『これ幸い』で。日頃、料理をするのも好きですが、限られた時間と食材で色々作るのと一緒で、限られたリソースの中での仕掛けを日々考えています」CSR推進特任マネージャーといったところだ。

入社は2007年。大阪大学大学院で特任助手を務めた後、中途で入社した。
幼少期を過ごした岡山県総社市は、「自然しかない」田舎町。自転車のまま川に突っ込んだり、虫や魚を捕まえたりして過ごした。中学時代の科学部で、川の石をひっくり返して生き物の種類から水質検査をしてみたりと、後の学びにつながる視点も見せ始めたが、決定的だったのは、瀬戸内海に浮かぶ美しい島が産業廃棄物の不法投棄で破壊された「豊島事件」だった。

「祖母が住んでいた島で、今思えば自分のルーツなのかなと思います。大人になるまで深刻さが想像できていませんでしたが、実際に豊島に足を運んで、島民の方のお話に耳を傾け、現場の臭いを嗅ぎ、ゴミの壁を見上げていたら、自然と涙がこぼれました」

その思いを胸に大学院で環境工学を学び、企業が環境と経営を両立するための指標や意思決定を支援するツールの開発を研究テーマとした。

「企業が環境問題を解決するのが先にあって、それが経営的にも成り立つよう誘導するのが研究テーマでした。工学部だったのに本棚は経営学や経済学の本ばかり」と笑う。

さらにドクター取得を目指して学ぶ中、所属する研究室が提案した「環境リスク管理のための人材養成」プログラムが文部科学省の事業に採択。指導教授の後押しで修了を半年繰上げ、特任助手に採用される。

社会人講座も兼ねたユニークな教育プログラムで、企業の環境担当者と大学院生が机を並べ、第一線の研究者・実務家から環境リスクの評価法やコミュニケーション技術を学び、議論を行う。毎年増える受講生を相手に、教材開発やレポートの採点から、予算編成、広報活動や講演会の運営などをこなす日々。全力で走りながらプロジェクトを運営してきたところで転機が訪れた。

「3年目の中間評価を乗り越えて、“強制終了”にはならなかったものの、プロジェクトは5年間限定。それまでに次の職場を探すか昇進しなきゃならないけど、そう簡単にポストもない。持続可能な世の中のための仕事なのに、自分自身が全然持続可能じゃなかった」

どこかの学会で発表中(2003年)どこかの学会で発表中(2003年)

「こら、あかん」と転職活動を開始。そんな折、当時知り合いだった島津の地球環境管理室の室長に声をかけられた。

「『うちにおいでよ』とありがたいお声をいくつかいただいたのですが、本当に応接室まで呼んでくれたのは島津だけ。しかも『実務で好きにやっていいよ、データは現場でいくらでも取れるし』とか、こんな魅力的な誘いはありません。研究の仮説を検証できる絶好の機会」と、入社に至った。

点と点を結びつけてどこにもない答えをつくる

地球環境管理室での岡野さんは、まさに水を得た魚だった。廃棄物処理、化学物質管理の関連法規を1から学び、社内ルールと共に、教育や監査の仕組みを作り、徐々にグループ内への浸透を図った。文字通り、ゴミに埋もれながらの実地調査や作業も厭わずに、全国の事業所や関係会社、支社支店の監査や教育に飛び回った。

社内の内部環境監査員の講習会(2007年)社内の内部環境監査員の講習会(2007年)

あるときは、金属材料を一個一個削るのではなく、まず斜めに切断した部材から削ることを提案し、モノ作りセンターの廃棄物と原価を下げることに成功した。
またあるときは、化学物質関連の相談窓口である“Cチーム”(化学物質管理推進チーム)を組織。当時は、薬品を吸って人が倒れたら健康・安全センター、発火したら総務部、環境中の漏洩は地球環境管理室と、担当がバラバラ。ある部門だけが問題を把握しているようなことも多々あったが、Cチームの発足で緊急時の連絡先を一元化し、リスク情報の共有を可能とした。

その一方で、島津の取り組みを企業向けセミナーや大学の講義などで積極的に発表。業界団体の委員会にも積極的に参加し、CSRに力を入れる企業としての側面をPRして回った。

社外での当社の活動の発表(2017年) 社外での当社の活動の発表(2017年)

さて次は…と思いを巡らせていた2018年、経営戦略室に異動。半年を経て、執行役員会の運営事務局に任命される。
「毎回同じやり方とはいかず、常にレベルを上げていくことが求められる仕事です。円滑な会議運営は重要な意思決定の迅速化や深い議論にもつながりますし、経営の方向性が決まる重要な場ですので、最大限の準備が必要です」

重責を担う日々の中、それでも寸暇を惜しんで考え続けていたのが冒頭のSDGsやCSR関連の取り組みだ。世の中の動向は日々のメディアだけでなく、生活や街中など様々なところからの気づきでついつい追いかけてしまう。
SDGsのバッジは、環境経営担当の稲垣常務からの言葉がきっかけだった。

「『最近良く見るSDGsバッジを島津でも作っては?』とご提案いただいたんです。単に作って配るだけではつまらないので、社名を入れましょうか。いや、そもそもバッジ自体に意味を与えられないか」

ちょうどその頃、岡野さんは石川県のとある企業が作った木製のSDGsバッジを持っていた。友人の紹介で森林保護を訴えるクラウドファンディングに参加した返礼品で手に入れたものだった。

「そう言えば、うちも南丹市に島津製作所の森があって、間伐材は手に入る。社内で色々と聞いて回ったら、創業記念資料館で間伐材を使ったノベルティを作ろうとしていました。木工作を請け負う会社さんを紹介いただき、すぐにイメージ図とサンプル部材を送ってバッジの原型を作っていただきました」

オリジナルのSDGsバッジ
オリジナルのSDGsバッジ
オリジナルのSDGsバッジ

他社の事例で、単に配るだけでは意味がないと聞いていたので、SDGsとは何か、島津にとってなぜ重要なのか、を知ってもらった上で着用してもらおうと、オリジナル教材とe-ラーニングも整備した。

リリース直後からマスコミにも取り上げられ、1年半で国内1,500人、海外400人の社員がe-ラーニングを終え、バッジをつけて仕事をし、顧客を訪問している。 「全く強制していないのに、気づいたら口コミで広がって、今や代理店や調達先の皆さんにまで展開しています」

CSRほどおもしろい仕事はない

岡野さんには、CSR活動を考える上で2つ信念がある。
「ただの社会貢献ではないんです。もちろん寄付や外部団体の支援は大切ですが、やはり最も大事なのは事業活動です。事業を通じたCSRの方が遥かに効果的で意義が大きい」

2020年、新型コロナウイルスの影響で飲食店の客足は激減し、フードロスが増えている。インバウンド需要が減り、観光地も疲弊。これを改善するのも持続可能な社会の構築には不可欠な視点だ。だからと言って困っている企業や自治体に寄付をし続けるだけで良いのか。

岡野さんが出した答えは、島津の顧客でもあるメーカーの商品や自治体の特産品を社内で紹介し、島津グループ社員による消費で、少しでも支援しようという取り組みだ。

営業経由で顧客企業に繋いでもらい、商品をウェブや売店で販売する仕組みを作った。顧客企業は自社製品のPRができ、営業部門から見れば顧客企業との絆を強めるきっかけとなる。

もう1つは、何か仕掛けるにしても、面白くしたり、付加価値をつけたりすること。
「食品を紹介するのでも、機能性食品を取り扱えば、社員や家族の健康にもつながる。さらに島津の装置の社会的な意義や、他社や自治体との関係性を改めて社員が知る機会になる。SDGsで言うと、『パートナーシップ』で『フードロス』、『健康』、『教育』、『まちづくり』などに貢献できます。新しい製品やアプリケーションの『イノベーション』にもつながるかも」 一石が三鳥にも四鳥にもなる戦術だ。

社内でもあふれるアイデアを実行に移し、実現している岡野さんだが、社外にも活動のフィールドがある。

東松島市でのボランティア参加時(2011年)東松島市でのボランティア参加時(2011年)

その1つが災害ボランティアだ。震災直後の東北で目の当たりにした惨状は「離れた京都からの支援」という想いを持つに十分だった。直後に合流した「ふんばろう東日本支援プロジェクト」では、東北や熊本、岡山などの地震や水害被害を受けた地域の食品などの販売を通じた支援を続けている。当初はわかめ養殖に不可欠なおもり(サンドバッグ)を京都のボランティアで作り、それを宮城の漁師さんに届けていた。やがて、生産されたわかめをボランティア団体で買い取り、京都市内のイベントで販売を始めた。
2014年からは年に2回、島津労働組合の主催で三条工場での販売会を開催。海産物やお菓子などが並び、1日の売上は20万円を超える人気企画だ。

被災地で目にした惨状から沸き上がった「何とかしたい」という強い想い。CSR活動における「寄付だけでなく地元産業の復活こそが最大の支援」という信念。その信念を共にするボランティア団体との出会い。そして被災地への貢献を考えていた島津労組と売店を運営する島津総合サービスの支援。これらを岡野さんが結びつけて、ユニークな活動が出来上がった。

「いいものを提供している自負もあり、ボランティア仲間も、買ってくれた社員の人たちも笑顔になるのは、本当に嬉しいです。お客様支援の活動も、このボランティア活動が出発点です。実はそろそろビジネスにつながりそうなアイデアもあって…今後も社内のボランティア休暇制度を活用しながら継続したいですね。」と目を輝かせる。

社内販売会の様子社内販売会の様子

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