For Your Winning! コラム
体の疲れを感じながらスポーツや仕事をしていませんか?普段からよく運動する人は体の重さや筋肉の張りに敏感だと思いますが、そのままにしている方も多いのではないでしょうか。運動習慣がない人でも座って作業をしているだけで実は体に負担がかかっています。気づいたときには痛みがあるなんてことに…
疲労を抱えたままだと怪我のリスクを高めたり、仕事の効率が落ちたりしますよね。そこで今回は、疲労を溜めずに良いコンディションを保つのに有効な、フォームローラーを使った「筋膜リリース」についてご紹介します。一人でもできるので自分の生活リズムに合わせて好きな時間に行うことができます。
筋膜リリースとは
筋肉を包む薄い組織膜「筋膜」を柔らかくして癒着をはがし、固まった筋膜を正常な状態に戻すことを「筋膜リリース」といいます。
筋膜は周辺の部位につながっているので、一箇所が固くなってしまうとその周りにも歪みやシワが生じて柔軟性や血流などの機能が低下してしまいます。
「筋膜リリース」を行い、筋膜の滑りをよくすることで、動かしやすい体を作ることができます。
フォームローラーとは
ストレッチやトレーニングを行うための円柱型のアイテムです。スポーツ用品店やインターネットなどで購入できます。
フォームローラーには様々な種類がありますが、サイズ、形、固さを見て自分に合うものを選ぶことが大切です。普段あまり運動をしない方は、凸凹が大きく固い素材だと強度が高い可能性があるので、凹凸が小さめかつ柔らかめの素材がオススメです。
ちなみに私は2種類持っていて、一つはスタンダードなタイプ。もう一つは振動する機能がついたタイプを使っています。振動によって体重をかけるだけでもコリがほぐれやすくなります。
筋膜リリースのやり方
フォームローラーを使った「筋膜リリース」のメニューを動画でご紹介します。
筋膜リリースのメニュー
■腰の筋膜リリース
膝を曲げてフォームローラーの上に仰向けになり、腕を上下させながら腰から肩にかけてフォームローラーを動かします。
■お尻の筋膜リリース
- ①両手で体勢を支えながら脚を組んでフォームローラーの上に座り、ストレッチを加えながら前後に動かします。脚をのせた側のお尻に意識を向けます。
- ②①の体勢のまま脚を回しながら周りの筋肉をほぐします。
- ③体勢を傾けてお尻の外側をほぐします。
■ハムストリングスの筋膜リリース
両手で体勢を支えながら一方の脚の太もも裏にフォームローラーを入れ、脚を伸ばしてお尻の付け根から膝裏にかけてフォームローラーを動かします。もう一方の脚を上に乗せると、より体重がかかり圧迫が強くなります。
■ふくらはぎの筋膜リリース
- ①両手で体勢を支えながら一方の脚のふくらはぎ裏にフォームローラーを入れ、膝裏からアキレス腱にかけてフォームローラーを動かします。強度を上げたい場合はもう一方の脚をかけて圧迫を強めましょう。
- ②①の体勢のままふくらはぎの内側と外側もほぐします。
■太ももの筋膜リリース
- ①両腕と片脚で体勢を支えながらうつ伏せのような状態になり、太ももの前にフォームローラーをセットします。肘を付けた状態で太ももの前側をほぐします。痛みが強い場合は肘を伸ばして行うと強度が弱まります。
- ②①の体勢から姿勢を傾け、上側の脚を前に交差させて太ももの外側をほぐします。強度を上げたい場合は両脚を伸ばして体重をかけましょう。
- ③同じ体勢のままフォームローラーを腰付近にセットしてお尻の外側も行います。
- ④片方の脚を寄せてフォームローラーを垂直にセットし、太ももの内側をほぐします。
■脇の下の筋膜リリース
- ①横になった状態で下側の手を上に伸ばし、フォームローラーを脇の下に入れます。身体を上下させて脇の下の筋肉をほぐします。
- ②①と同じ体勢で脇の外側もほぐします。
■脛の筋膜リリース
両手で体勢を支えながら正座の状態でフォームローラーの上に乗り、手をついて前後に動きます。
痛みを感じる部位は強く動かさず、軽く圧迫するようにします。続けるうちにだんだんと痛みが和らいでいくので、焦らず自分のペースで進めていくのが大切です。
下半身のメニューを片側だけ行ってから足踏みしてみると、ケアをした方の足が上がりやすく感じられるはずです!
まとめ
「筋膜リリース」によって筋膜をほぐすことで、体の動かしやすさを高めるのはもちろんですが、血行も改善され、代謝の向上やむくみの解消にもつながります。
毎日時間をとることができなくても、継続して定期的に行うことで、様々な体の不調の改善が期待できます。皆さんもぜひ試してみてください!
【Breakersを指導するトレーナー・横山正吾さんからのアドバイス】
日本国内をはじめ、世界各国で行われている大会を転戦するテニス選手たち。毎週、過酷な試合を繰り返し、大会が終わればすぐ次の会場へと移動、また違う環境で試合をするという生活の中では、気づかないうちに徐々に疲労が蓄積してきます。
そこで大切になってくるのが、選手自らが行なうセルフケア。セルフケアを行なうことにより、疲労回復はもとより、自分の身体の状態を知ることができ、怪我の予防やパフォーマンスの向上に役立てることができます。これはプロ選手だけではなく、テニス愛好家の方にも同じことが言えます。
まずは理論編としてフォームローラーの効果を説明していきます。キーワードになるのは「筋膜」です。筋膜とは筋肉を包み込む膜のこと。ソーセージをイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。ソーセージの中にある肉が筋繊維、それを包み込む皮の部分が筋膜です。筋膜が筋繊維を包み込み、それがいくつも集まって1つの筋肉になります。筋肉以外にも骨や臓器などを筋膜が包み込み、私たちの身体を形作っています。
例えて言うなら、全身タイツのイメージです。小さな筋繊維から筋肉、骨、臓器まですべてを筋膜が包み込んでいます。
そんな筋膜ですが、硬くなりやすいという特徴があります。スポーツ動作の繰り返しや、長時間に渡り同じ姿勢をキープするデスクワークなどによっても硬くなります。
上の写真ではシャツにテープを張っています。テープを張った場所が硬くなった筋膜のイメージです。1カ所が硬くなるとそれにつられて周りの部分にもシワが寄り、全体のバランスが崩れた状態となります。
この状態を放置すると痛みがでたり動きが悪くなったりと、悪影響を引き起こす原因となります。このように、硬くなり痛みの引き金となる部分を「トリガーポイント」と呼びます。トリガーポイントが発生すると、ストレッチをしても筋肉全体をバランス良く伸ばすことが難しくなります。この場合は、フォームローラーなどを用いたケアの後にストレッチをすると効果的です。
まず、筋肉のラインに沿って圧を加えながらフォームローラーを動かします。痛みを感じるトリガーポイントの部分では、動きを止め圧迫をかけていきます。ローラーを使ったセルフマッサージです。
痛みが強い場合は軽い圧迫からスタートしてみてください。しばらくすると徐々に痛みが和らいでくるのが感じ取れると思います。トリガーポイントがなくなれば筋膜(筋肉)の動きが良くなり、関節可動域も向上していきます。
ぜひ、普段のウォーミングアップ、クーリングダウンのなかに取り入れて、パフォーマンスアップ、慢性的なケガの予防に役立ててみてください!
横山正吾トレーナーのプロフィール
大阪社会体育専門学校 アスレティックトレーナーコースを卒業後、フリーインストラクターを経て、現在はテニス選手のトレーニング指導を中心に活動中。グランドスラムに出場するプロ選手から、大学、高校のテニス部、キッズまで幅広く指導。2016年から「SHIMADZU Breakers」の社員選手のトレーニングやコンディショニングを支えている。