お知らせ

2019年度 島津賞受賞者決定

2019.12.10(火)

第39回島津賞(2019年度)

東京工業大学 理学院 化学系 教授

腰原 伸也 氏(59才)

受賞者には、表彰状・賞牌・
副賞500万円を贈呈
研究業績
超短パルスレーザー光と放射光を用いた動的構造解析法の開拓と光誘起相転移の研究
推薦学会
日本物理学会
受賞理由
放射光とフェムト秒パルスレーザーを組み合わせた専用測定装置を、動作原理を含めその初期段階から開発・活用して、光で物質の性質を超高速かつ劇的に変化させる「光誘起相転移現象」という従来の概念を突破する研究分野を世界に先駆けて開拓した。これにより超高速での情報処理や、高効率なエネルギー利用、さらには情報処理の(量子)過程制御が可能な材料開発への道を切り拓いたことを高く評価した。
研究内容
私たちの活動を支える情報・電子システムは、電子機能、情報記憶、電力流路といったその役割に応じた種々の電子材料によって構成されています。しかしこれらいずれにおいても、結晶全体が均一かつ材料の性質が時間とともに変化しない、安定で静的な構造(平衡状態とも呼ばれます)という舞台の上での電子の動き(基底状態)を利用することが基本となっていました。ところが社会の高度化に伴い1兆分の1秒(1ピコ秒)から1000兆分の1秒(1フェムト秒)という超高速での情報処理や、高効率なエネルギー利用、さらには情報処理の(量子)過程制御が可能な材料の登場が強く要請されるようになりました。この為には、誘電体と非誘電体、金属と絶縁体といった従来は全く別な物質の状態(相)と考えられてきたものを、光励起を用いて1ピコ秒以下の時間で入れ替え(相スイッチ)られる、という従来の発想では全く想定外の物質やその制御法の開発が不可欠です。従来の材料に必須であった「固くて安定・静的」という既成概念を乗り越えることが必要不可欠なのです。この世界的要請にこたえるべく、光で物質の性質を劇的、それも超高速に変化させる「光誘起相転移現象」という従来の概念を突破する研究分野を世界に先駆けて開拓してきたのが腰原氏です。
このような、既存の枠組みを大きく離れた、新しい物質を具体的に開拓するためには、光学的、電子的、磁気的性質の超短時間での変化の観測、さらには原子スケール(オングストロームスケール)の物質の変形観測技術(分子動画技術)開発も必要不可欠です。中でも光誘起相転移現象物質開発の鍵となるのは、光励起後超短時間で発生する結晶構造の動的変化の観測です。このために、腰原氏は放射光とフェムト秒パルスレーザーを組み合わせた専用測定装置を、動作原理を含めその初期段階から開発・活用し、この分野の研究を先導してきました。そして、開発した観測装置を駆使して、光励起状態においてのみ出現する新構造秩序(隠れた秩序状態:Hidden State)を世界に先駆けて発見し、光加熱効果に邪魔されない光スイッチ材料の開発という新機軸を切り拓き世界的にも高い評価を得ています。加えて、開発した動的構造解析装置を、固体光応答材料の結晶のみならず、生命機能分子や溶液中の光-化学エネルギー変換(光触媒)材料にも適用してその動作メカニズムを世界に先駆けて明らかにするなど、動的構造観測装置・解析技術の一般的有用性も示してきました。さらに最近になって、フェムト秒レーザーを用いて発生させたサブピコ秒電子線パルスを用いた動的構造解析装置を固体材料向けに発展させ、Hidden Stateを活用したフェムト秒超高速光相スイッチ物質の開拓にも成功しました。このような腰原氏の光誘起相転移現象研究は基礎、応用両面で高い評価を得ています。

腰原氏の業績については、東京工業大学のHPでも紹介されています
島津賞とは

島津賞は、科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究および応用・実用化研究において著しい成果をあげた功労者を表彰します。表彰は毎年原則1名で、表彰者には賞状、賞牌、および副賞500万円を贈呈します。

2019年度島津賞、島津奨励賞表彰式並びに研究開発助成金贈呈式は下記の通り行います。

日 時 2020年2月19日(水)
表彰式・贈呈式 13:30~14:40
島津賞、島津奨励賞受賞記念講演 14:50~15:50
祝賀パーティー 16:15~17:15ごろ
場 所 京都ホテルオークラ(京都市中京区河原町御池)