アプリケーション開発
分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター
ライフサイエンスG(秦野)
林田 桃香 / 2019年入社
体のなかでは何万もの代謝が起きていて、絶妙にバランスが取れているところに生命活動がある。生物を勉強していて、そう知ったときのドキドキするような感動はいまでも忘れられません。その気持ちに導かれるまま、大学院まで研究を続け、就活では、研究職の方がお客様なら、技術に詳しい方が多くて楽しく仕事ができそうだなと島津の説明会に参加しました。その説明会で島津が行なった認知症の早期発見に関する研究や、質量分析装置とカメラが一体になったiMScopeの開発の裏側を聞いている間も、ワクワクし通しでした。
もっとも、仕事となるとそんなことばかりは言っていられません。分析装置にはまったく触れたことがありませんでしたから、研修では初めて聞く用語と格闘の連続。操作となると、おっかなびっくりでしたが、お客様向けに開催されている装置ごとの研修に参加し、一台一台丁寧に教えてもらって、どうにか扱えるようになっていきました。
8月に配属されたのは、液体クロマトグラフィーの分析条件を検討する部署。同じ装置でも、移動相に用いる液体の種類や温度設定、検出方法などによって、取れるデータはまったく異なります。お客さまが求めているのはどんなデータか、そのためにはどんな条件が必要かを考えて、手法を選択していきます。配属早々、一つ案件を任されて、そこからは仕事をしながら実践で覚えていきました。といっても前日退社前に装置にかけていったものが、翌朝チェックしたらまったくデータが取れていなかったなんて失敗もさんざんやりました。でも、そのたびに先輩や上司が「こうしたらどう?うまくいくかもよ」とアドバイスしてくださり、少しずつスキルを磨いてこられました。
いちばん難しいなと感じているのは、お客様とのやりとりです。お客様は、新しく装置購入を検討するにあたって、他社と性能を比較できるデータがほしいとおっしゃることが多いのですが、同じ装置でもどういうデータが見たいのかは、お客様によってまちまちです。精度なのか、手軽に分析できることなのか、それによってアプリケーションも異なってきます。ただ、お聞きしていても、お客様が何を望んでいるのかはっきりとつかめないことも多く、思いつく限りのことを試して形にするということも少なくありませんでした。でも、あるとき、先輩から「それって本当にお客様が欲しがってものになっている?」と言われて。自分がちゃんとニーズを汲み取れていないということに気づかされたのです。お客様が言葉にできない部分こそ、実はいちばんの課題だったりする。そこをどう引き出して差し上げるか、もっと勉強が必要ですね。
いまは、代替試験のプロトコロルの開発に携わっています。代替試験とは、従来動物を使って行なっていた実験を、化学物質や人工皮膚を使って行うものです。医薬品や化粧品の開発では、これまで試験管レベルの実験とヒトでの臨床試験の間で、動物を使った実験が必要とされていました。わざとアレルギーを起こしそうなサンプルを塗ってみたり、炎症を起こさせたりというもので、近年、動物愛護の観点から批判が強まっていたものです。
ところが、炎症を引き起こす代謝メカニズムが解明されたことで、化学物質を使って、代謝の正体である化学反応を再現させることができるようになり、信頼性のあるデータが取れるようになったのです。
代替試験であれば、経費と時間を大幅に削減ますし、なにより動物を犠牲にすることもなくなります。
私が取り組んでいるのは、その分析の手順を開発すること。どのような手順で試験をすれば、動物実験と同等の信頼性を得られるか、どんなアプリケーションであれば使いやすいか、試行錯誤を続けています。きちんと構築できれば、島津にとっても装置の販売につながりますし、製薬メーカーや化粧品メーカーなど多くのお客様にも喜んでもらえるはずです。
将来は、いま担当している液体クロマトグラフに限らず、ガスクロマトグラフやいろいろなタイプの質量分析装置も含めて、得意なライフサイエンス分野でさまざまな提案ができる技術者になりたいと思っています。覚えることはたくさんありますが、大好きな生物学の知識を生かせる職場に就けていると思えば、苦にはなりません。