母国のフィリピンで大学を卒業し、さらに勉強を深めるため留学を志しました。自然環境について学びたかったので、留学先に思い浮かんだのは環境先進国のドイツか日本。そのとき、大学時代に研究室で使っていた島津製の分析装置を思い出し、その装置のイメージの良さが留学先の決め手になりました。大学院では植物の代謝を分析して、環境の影響を探る研究に携わっていました。
大学院の修了が近づき日本で就職先を探そうとしていたとき、研究室によく来ていた島津の営業の方が、「うちでインターンしてみない」と声をかけてくれたんです。ノーベル賞を受賞した島津社員の田中耕一フェローのイメージもあり、基礎研究にもきちんと力を入れている企業だろうと、「ぜひ、お願いします」とお答えしました。行ってみると、人の雰囲気も良くて働きやすかったので、ここに就職したいと思いを強くしました。
実際に仕事を始めると“モノを作り出す”ことの面白さに夢中になりました。研究で新しい発見をするのもやりがいがありますが、実際に手で触れられるモノを作るのは、それとは違った喜びがあります。そして、その機器を使って誰かが新たな研究成果を挙げてくれたら……と考えるとワクワクします。
今、所属しているビジネスユニット(BU)は、製品のコンセプト作りから、実際の製品化、どうやって売るかというマーケティングまで一貫して担当することができます。「こういう物があったら便利なんじゃないか?」と考えて、それを製品に落とし込む。先日まで、ガスクロマトグラフ(GC)関連製品のプロジェクトを担当していましたが、コンセプトを立てるところから関わった製品が世に出ると、言葉で言い表せないくらいの達成感があります。
とはいえ、そこに至るまでの道程は苦労の連続でした。製品のコンセプトを決めるには多くの人に意見を聞きますが、誰一人、同じ意見はなくて何が正しいのか混乱します。全ての意見を反映しようとしていたら、結果的に誰も喜ばない製品になっていたでしょう。迷ったときにはユーザーの視点に立って考える。その大切さを痛感しました。
ユーザーから見て良い製品をより使いやすく、より手軽に作ることができれば、もっと多くの人に使ってもらえるはず。そして、それは世の中をより良くする研究の成果につながります。何より、良い製品ができたら自分でそれを使って、また研究をしてみたいと思っています。