「手づくりチョコ」は、手づくりではない?
いよいよバレンタインデーが近づいてきました。
ある製菓会社の調査によると、女性がチョコをあげる相手の1位は「女友達」だそうです。あれ? バレンタインって告白イベントじゃなかったっけ? あらためてランキングを確かめると、「告白したい男性」はなんと最下位。渾身の手づくりチョコは、女性同士の間を行き来していたんですね。どうりでこっちに回ってこないわけです。
さて、その「手づくりチョコ」。いくつかレシピをのぞいていて、気になることを見つけました。どれも材料のところに「チョコレート」と書いてある。あれ? つくってない。チョコそのものを買ってきて、溶かして、固めている。果たして、これを手づくりと呼べるのか。
しかし、聞いてください。チョコを1から家庭でつくることは、実はこの上なく難しいことなのです。
チョコの生命線は、口どけにあると言われています。あのなめらかさを出すには、人間が粒として感知できないところまでカカオを砕かなければなりません。そのサイズ、25ミクロン以下。ちなみに、日本人の髪の太さは平均80ミクロン。どれほどの細かさか、おわかりいただけると思います。なんとかやりとげたとして、さらなる難関が待ち構えています。それは「コンチング」という工程。風味を出しつつ、よりなめらかにするために練る。ひたすら練る。海外の有名ブランドでは、丸3日間ぶっつづけでやるそうです。家庭では、ちょっと難しそうです。 かといって、材料用のチョコを買ってきてつくる場合でも、油断はできません。固めるときの温度調整をわずかでもミスると、結晶が安定せずなめらかさが失われます。手づくりチョコの失敗は、ほとんどが温度調整の失敗。それほどデリケートなのです。
これをお読みのあなたが、バレンタイン当日、手づくりチョコをもらったら。ぜひ思い出してください。手づくりへの挑戦は、深い思いがなければできないものだ、ということを。そうすれば、チョコがちょっと硬かったりしても、まったく苦にならないはずです。