週刊科学の冒険
【vol.11】 科学の冒険は終わらない
世の中、「平均より上」の人だらけ?
あなたは、平均より優れた人間ですか。
こんなこと聞かれたら困りますね。そうですとは答えにくいし、劣っているのもイヤだし、「ちょうど平均」とか答えてごまかそう……というのが、ふつうのリアクションではないでしょうか。
ところが実際には、ほぼすべての人が「自分は優れている」と思っているそうです。「みんながみんな平均より上」では平均の意味がなくなってしまいますから、現実にはそんなことありえません。つまり、多くの人が自分を過大評価している。これは「優越の錯覚」と呼ばれ、心理学の世界では古くから知られている現象です。けれど、どうしてこんなことが起こるのか、生物学的にはずっと謎のままでした。

2013年、日本である実験が行われました。まず被験者たちの「優越感」が調べられました。すると、彼らの多くが「自分は平均より22%優れた人間だ」と思っていました。さらに、脳の働きが観察されました。その結果、脳内にある「線条体」と「前部帯状回」というふたつの制御機構の同調性が低いほど、錯覚が強いという結果が出ました。
なんだか小難しくなってきました。要するに、「自分は他人より優れている」と思い込んでしまうのは、そもそも脳にそういう仕組みがあるからだとわかったのです。

脳は、わかっていないことのほうが多い器官です。100年来の定説が、あっさり覆ることもめずらしくありません。アメリカでは、2013年にヒトの脳の仕組みを解明するための国家プロジェクト「ブレイン・イニシアチブ」を打ち出しました。10年間で脳機能の全容解明に向けて、現在も進行中です。「ヒトゲノム計画」に続き、脳の研究は次なる世界的なムーブメントになるのではないかと目されています。それにしても、人体を司る脳がいまだにブラックボックスで、しかも「優越の錯覚」などという厄介な機能を備えているとは。「自分はまだまだわからないことだらけ」という、謙虚で慎重な姿勢のもと、自己分析は進めたいものです。
脳は、残されたフロンティア。
脳の謎を解き明かすには、脳内で何が起こっているかを画像化するイメージングが不可欠です。島津は、光脳機能イメージング装置「LABNIRS」を開発。磁気共鳴によるイメージング(fMRI)にかわり、近赤外分光を用いた分析技術(fNIRS)を採用しました。fNIRSには、fMRIにはないさまざまなメリットがあります。たとえば、姿勢や動き。fMRIは、トンネルのような装置の中で、じっと動かず、横たわった状態でしか計測できませんでした。fNIRSは頭にホルダをかぶせるだけなので、走っていても、座っていても計測OK。人体のさまざまな状態に応じた脳の動きを観察することができます。また、生まれたての赤ちゃんにも安全。実際に新生児に使用され、その脳の発達には、視覚や聴覚以上に触覚が影響していることもわかってきました。これらの特徴を活かし、医学、心理学、教育、さらにはロボット工学など、さまざまな分野での活用が期待されています。宇宙と並んで、未開のフロンティアと呼ばれることもある脳。宇宙に旅立つにはロケットが不可欠なように、脳を探索するとき、そこには島津のマシンがあります。
さぁ、「科学の冒険」に出かけよう。
さて、11回にわたってお送りしたメルマガも、これでおしまいです。お楽しみいただけたでしょうか。
いろんなテーマを取り上げてきましたが、いちばんお伝えしたかったことはひとつ。
「科学とは、冒険だ」。
それも、とびきりわくわくするような。世の中を変える研究や発明は、いつだって好奇心から生まれました。なぜ? どうして? ある事柄について湧き上がった好奇心を、試行錯誤をくりかえしながらどこまでも追求していく。その先には、まだ誰も見たことのない地平が広がっている。思えば島津の道のりも、そんな冒険の積み重ねでした。メルマガは終わったけれど、科学の冒険はまだまだ続きます。そして、島津とみなさんとの出会いが、あたらしい冒険のはじまりにつながったなら、こんなにうれしいことはありません。
発行: 株式会社島津製作所
人事部採用グループ
saiyou@group.shimadzu.co.jp
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