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田中耕一 写真
1月、当社の三条工場に「田中耕一記念質量分析研究所」が誕生しました。田中耕一フェローのノーベル賞受賞で、一躍世に知られるところとなったタンパク質の質量分析。同研究所では、装置のさらなる性能向上を目指した研究開発を行なうと同時に、タンパク質による病気の診断などをターゲットとした質量分析の応用法の開発などにも力を入れていきます。 所長の田中耕一フェローに、意気込みを聞きました。
 
この内容は当社発行の『お客様とのコミュニケーション誌 ぶーめらん』に掲載された物です。当WebサイトにPDFファイルもご用意しています(「ぶーめらん」紹介ページ>>)。
基礎研究を重ね 事業部で製品開発
お客様に求められているものは何かという視点が研究開発には不可欠私は入社以来、一貫して質量分析の研究に携わってきました。ただ、これまでずっと研究室にこもっていたのかというと、そういうわけでもないんです。
83年に入社して、すぐに配属されたのが技術研究本部の中央研究所です。そこで、2002年のノーベル賞受賞につながった質量分析装置のレーザーイオン化法について基礎研究を重ねてきました。
2年ほど試行錯誤を繰り返し、85年の2月に、大きな成果が得られ、その後学会で発表し、世界に紹介しました。
その翌年、私は計測事業本部第二科学計測事業部技術部へ異動しました。レーザーイオン化法による質量分析の研究を「質量分析装置」として製品開発することになったのです。装置の開発、改良はもちろんのこと、新製品審査とか、品質保証といった作業も必要です。それら一つひとつを行なうことで、製品として世に送り出すためにはどうすればよいかということを、学びとることになりました。
さらに、今度はそれをお客様に販売するところにも携わることができました。私自身がお客様(多くは大学等の研究室の先生ですが)のもとを訪れて、装置の使い方を説明し、またお客様のご要望を聞いて、改良を行なう。これは製品開発を行なううえでも、またレーザーイオン化法そのものの改良を進めるうえでも非常に貴重な機会だったと思います。
お客様が何を求めているかわからない状態で、技術開発をやっても決していい結果はでない。かといって、お客様の希望にばかり目を向けていても方向が定まらないことがあります。質量分析装置の開発を通じて、そのことを痛感させられました。
欧米と伍していくために何とか手を打ちたい
田中耕一 写真こうした思いは、海外の事情を見るにつけ、より強くなりました。長い間、日本、とくに日本の企業は、組織が基礎研究、製品開発、営業と分かれてしまい、それぞれがもっとも効率がよいように活動し、連携するということがあまり見られませんでした。しかし、イギリスの関係会社に出向していたとき、そこで見た欧米の会社の仕事の仕方はまさに対照的でした。当たり前のように、研究から営業までのスタッフがチームを組み、ユーザー、すなわちお客様とも密接に連携をとりながらプロジェクトを進めていたんです。
結果的に、日本には優れたアイデアはいっぱいあるのに、それを製品化する前に、海外の企業に先を越されてしまう。しかもボタン一つで前処理から分析までできてしまう非常に使いやすい製品が出てくる。見ていてたいへん悔しい思いがしました。
欧米の企業と伍していく、あるいは超えようとしたときに、従来の日本のやり方では限界がある。なんとか手を打たないといけないな、と長く感じていたのですが、実行できないまま、ここまできてしまいました。
現場にいなければ アイデアも出てこない
もちろん、こうしたことは私一人の力でできるものではありません。企業が、あるいは国が、産業と行政、学識関係者の連携を促すような働きがなければ、うまくはいかないでしょうし、少なくとも、私自身がひとつの組織のトップとならない限り、そうした場をつくることすらできません。
でも、そうすると、私は組織を運営する立場にまわって、現場から一歩引かなければならなくなってしまいます。それは、私にとってもっとも怖いことなんです。
私は何といっても技術者です。装置を触っていて、それで初めて新しいアイデアが浮かぶ。その時間がなくなったら枯れてしまいます。これまで何度か昇進の機会があったのですが、それに熱心に取り組まなかったのも、根無し草になってしまうのが怖かったからなんです。受賞してからは「役員に」というお話もいただきましたが、一足飛びにそこまで上に立っても、私にはきっと務まらなかったでしょう。テクニカルセンター写真
今回、田中耕一記念質量分析研究所が創設され、その所長を務めさせていただくことになりました。所長といっても小さな所帯で、自分自身でも装置の開発に直接携わりながらということになります。
私はこの研究所を、これまでずっと願ってきた理想の形、つまり、基礎研究、製品開発、販売、そしてお客様が一緒になって、ひとつの目標の達成を目指す、そういう場所にしていきたいと考えています。
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