電気発熱法

電気発熱法の概要

VOC汚染対策技術の問題点

揮発性有機化合物(VOC)は、粘性が低く、一般に水より重いため、地下深層部まで浸透し、地下数十メートルにおよぶ土壌・地下水汚染を引き起こします。テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、及びその分解生成物であるジクロロエチレン(DCE)などが代表的なVOCですが、一旦、粘性土壌粒子に浸み込んだこれらVOCの除去は困難で、浄化には長期間を要する事例が多いとされています。

こうしたVOC汚染土壌の浄化技術としては、揮発しやすい性質を利用した土壌ガス吸引法、VOC汚染地下水を揚水する地下水揚水法、酸化剤や還元剤の注入によってVOCを無害化する化学分解法、そして微生物による脱塩素化を行う微生物分解法などが知られています。しかし、これら従来法は、砂質土での効果は高いものの、粘性土や関東ロームのような難透水性土壌の浄化には不適で、環境基準値の10~100倍からなかなか濃度が下がらない現象が散見されています。これは、透水性が低いため、ガス吸引や地下水揚水は難しいこと、更に、酸化剤・還元剤や微生物活性化に必要な栄養素等の注入と拡散が難しいことが原因です。このため、一旦、地下水濃度が低下したサイトでも、粘性土に吸着しているVOCが時間経過とともにじわじわ地下水中に溶け出して地下水中のVOC濃度が再上昇する現象(いわゆるリバウンド現象)も多数報告されています。

新しい「電気発熱法」技術

「電気発熱法」は、島津製作所がオランダから技術導入したVOC汚染土壌の原位置浄化対策技術で、大規模な土木工事が必要なく、建物直下でも対策可能な画期的な工法でした。しかし、オランダ特有の軟弱な土質と地下水位の高い飽和帯を対象として開発された技術であり、その電極構造や浄化コンセプトは、日本の土壌汚染状況や土質に必ずしも適合しておらず、そのままでは実用化に至りませんでした。

島津製作所は、この「電気発熱法」の長所に着目し、オランダオリジナルの手法の問題点を解決することで日本のニーズに合った新しい「電気発熱法」を開発し、2013年6月に開催された『第19回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会』で発表しました。

電気発熱法の原理

電気発熱法では、地盤に挿入した電極から土壌に交流電流を流すことで、土壌自身の電気抵抗によって発生するジュール熱により、土壌温度を40℃~80℃にします。この土壌温度の上昇により、土壌粒子間に強固に吸着・残留していたVOCは、昇温前に比べて脱離しやすくなり、かつ粒子間の拡大に伴う流動性の向上を促します。さらに、VOCそのものの気化と間隙水の水蒸気化を促進することになり、VOCガスとしての回収率が向上します。一方、VOC分解微生物の活性化に最適な温度となるように昇温・保温してやることにより、微生物分解法の浄化を強力にアシストする技術としても活用できます。

電気発熱法による浄化プロセスを以下に示します。

  • 1) 地盤に挿入した電極に三相交流を印加
  • 2) ジュール熱により土壌が発熱開始、目標温度に到達して保温
  • 3) 土壌温度上昇に伴い粘性土壌粒子間に強く吸着しているVOCが地下水中へ脱離、一部は気化
  • 4) ガス圧の上昇、水の粘性低下により、難透水性土壌中でのVOC分子や注入薬剤などの流動性が向上
  • 5) 地下水の揚水、あるいは土壌ガス吸引開始 (VOCの回収開始)
  • 6) 微生物分解法との併用では、土壌粒子間の物質流動性の向上と、微生物の分解活性の向上によりVOCの脱塩素化が促進
  • 7) 化学分解法との併用では、土壌粒子間の物質流動性の向上と、化学反応速度の向上によりVOCの脱塩素化や分解を促進

次図に電気発熱法のシステム概要を示します。

図-1 電気発熱法システム概要図

図-1 電気発熱法システム概要図

実施事例

2013年の発表から約5年間で、パイロットテストと実施工を合わせて20件を超す実績があり、今なお複数サイトで対策実施中です(表1)。

表1 おもな実績事例

表1 おもな実績事例

今後は、電気・熱シミュレーション技術の向上による設計・運転管理の最適化、IoT技術適用による遠隔での運転管理とモニタリングの採用など、より一層システムを発展させながら実績の拡大に努めてまいります。

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