島津評論 Vol.55[1](1998)
特集 産業機器II

普通論文

SQUIDを用いた非破壊検査装置の開発

冨田司1松田直樹1品田恵1荒川彰1山田康晴1吉田佳一1

島津評論 55〔1〕 53~60 (1998.8)

要旨

金属材料の劣化の診断・欠陥の検出を目的として,超高感度磁気センサであるSQUIDを用いた非破壊検査装置の開発を行った。新たに開発した小型で高精度のSQUIDを用いることにより,環境磁気雑音の影響が軽減され,磁気および電磁シールドルームを用いることなく測定が可能となった。また,SQUIDを冷却する液体ヘリウムデュワーとして,底部の真空層の厚さが2 mmと非常に薄いものを開発した。これにより,試料とSQUIDとの距離を従来の1/10に短縮することができ,空間分解能が2 mmに向上した。

本稿では,SQUIDの原理と,今回開発したSQUID非破壊検査装置の概要を示すとともに,その応用例として,金属材料の劣化の診断・欠陥の検出の結果についても報告する。劣化の診断ではオーステナイト系ステンレス鋼SUS304の引張試験片の測定を行い,加工誘起マルテンサイト変態に伴うと考えられる磁場分布を観測した。このことから,本装置が金属材料の疲労・劣化の診断に有効であるとの結論を得た。また,欠陥の検出としては渦電流を用いたAlの円孔欠陥の検出を行い,表面に露出した欠陥に対しては直径0.3 mmの欠陥まで,表面から2 mmの深さにある欠陥に対しては直径1.0 mmの欠陥まで,検出可能であることが確認できた。


※所属名は論文作成時のものです。
1基盤技術研究所

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