島津評論 Vol.76[1・2](2019)
特集 マテリアル

特集論文

熱可塑性CFRPの曲げ強度および曲げ弾性率におけるひずみ速度依存性・温度依存性評価

矢野 文彬1亀井 由樹1石川 健2松尾 剛3

島津評論 76〔1・2〕 33~42 (2019.9)

要旨

高性能と高生産性を併せもつ熱可塑性CFRPは輸送機への適用が期待されており,その性能保障のため,衝撃特性や温度特性を把握することがますます重要になっている。本研究では,熱可塑性CFRPの速度依存性および温度依存性を評価するために,3点曲げ衝撃試験を実施した。マトリックス樹脂と強化繊維は同一だが, 強化形態の異なる3種類の熱可塑性CFRPを試験片として用意した。3点曲げ衝撃試験に加え,高速度ビデオカメラを用いた破壊観察や試験後の試験片の破面観察も実施した。3点曲げ衝撃試験の結果から,おおよそ曲げ強度や曲げ弾性率は,低温・高速ほど高い値を,高温・低速ほど低い値を示す傾向にあることがわかった。
また,破壊の起点や破面の損傷の様子も試験条件により変化することが明らかとなった。しかしながら,速度依存性や温度依存性による変化量の大きさはそれぞれの材料で異なっており,強化形態が速度依存性・温度依存性に影響を及ぼすことが明らかになった。


1分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター
2三菱ケミカル株式会社 愛知研究所高機能成形材料研究室
3東京大学大学院 工学系研究科

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。