島津評論 Vol.72[3・4](2015)
特集 先端技術開発

特集論文

nSMOL:抗体医薬の標準的分析手法の開発と医薬・医療への実装を目指して

岩本 典子1嶋田 崇史2

島津評論 72〔3・4〕 73~82 (2016.3)

要旨

著者らは,抗体医薬血中濃度の新規測定法Nano-Surface and Molecular-Orientation Limited Proteolysis(nSMOL)法を開発した。医薬品血中濃度は,良好な薬効指標とされている。投与された抗体医薬に対し,薬物動態の全体像を把握することは,毒性,病巣組織分布などによる抗体医薬開発をサポートでき,抗体治療においても臨床的指標提供が可能となり,最適化医療への適用が期待される。nSMOL反応は,抗体を100nm細孔径樹脂に固定し,直径200nmのナノ粒子表面上のプロテアーゼを用い,抗体とプロテアーゼの接触を制限することで,可変領域選択的な分解を可能にしている。nSMOL法による抗体医薬の血中濃度測定法は,従来のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)や質量分析での測定を陵駕する精度,安定性,再現性および広い分析定量範囲を確保しており,低分子医薬品のLCMS分析ガイドライン基準をクリアしている。さらに,抗体医薬の種類や生物学的背景に依存しない手法であるため,臨床薬物動態において有用な分析手法となる。


1基盤技術研究所ライフサイエンス研究所 博士(医学)
2基盤技術研究所ライフサイエンス研究所 博士(学術)

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。