島津評論 Vol.64[3・4](2007)
特集 ライフサイエンス・分子イメージング

普通論文

食品中残留農薬分析における簡易分析法の検討
―QuEChERS 法および従来法との比較―

山田恭子1和田豊仁2岡村嘉之2日根隆2

島津評論 64〔3・4〕 185~196 (2008.4)

要旨

食品中残留農薬分析における簡易分析法として,2003年にAnastassiades らの報告した手法「Quick,Easy,Cheap,Effective,Rugged and Safe(以下,QuEChERS オリジナル法)」を一部改良し(以下,QuEChERS 改良法),その実用性を評価した。一部の農薬を除き,おおむね80~150%の良好な回収率が得られた。グラファイトカーボン(以下,GCB)の使用により,大豆に含まれるステロール類の精製効果が確認され,添加量増加により精製効果も増したが,添加量増加に伴って農薬回収率が大きくなったことから,GCB 粉末がマトリックス効果を誘引している可能性が示唆された。また,GCB との親和性が高いために回収率が低くなる農薬の回収率がリンゴに比べ大豆で若干高かったことから,GCB 使用時におけるステロール類などの成分の有無が一部の農薬の回収率に関与していることも示唆された。農薬残留作物を用い,QuEChERS 改良法と従来法での定量値の比較をした結果,定量値に大きな違いは見られなかったことから,QuEChERS 改良法の実用性は高いと考えられた。


1株式会社島津総合分析試験センター 分析試験部
2分析計測事業部 応用技術部
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。