擬似位相整合技術について

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擬似位相整合技術について
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擬似位相整合(QPM)技術について

非線形光学特性を持った結晶に基本波光となるレーザ光を入射させると、非線形効果により波長変換された光が発生します。しかし、通常の結晶では屈折率分散1)のため、基本波光と波長変換光の波長に対応する屈折率が異なり、各々の光の位相速度に差が生じ、位相が揃わず波長変換光が増大しません。

この解決のためには、互いの光の位相をそろえる(位相整合する)必要があります。その方法として、複屈折性を有した結晶を使用する複屈折位相整合法(Birefringence Phase Matching:BPM)と周期分極反転構造を結晶内に形成した結晶を使用する擬似位相整合法(QPM)の2つの方法があります。

複屈折位相整合法

複屈折性を有する結晶は、結晶の方位と偏光方向により異なる屈折率分散を持っています。基本波光と、発生した波長変換光の偏光方向がそれぞれ異なる方向に結晶軸をとると、各々の波長は異なる屈折率分散の影響を受けるようになります。さらに、結晶の角度や温度を調整することで、双方の光に対応する屈折率を等しくすることができて、基本波光と波長変換光の位相速度が一致し、位相整合をさせることができます(以下に基本光波長 1064nm、波長変換光波長532nmの場合の例を示します)。

屈折率分散と複屈折位相整合
図1.屈折率分散と複屈折位相整合
複屈折位相整合法は、理想的な位相整合条件を実現できますが、一方で、結晶の複屈折性特性に大きく依存するため、波長変換に利用できるレーザの波長と活用できる非線形定数(d定数)が限定されます。また、複屈折性結晶の異方性により、結晶内を伝播するにつれて、基本波光と波長変換光の進行方向にずれが生じる"ウォークオフ"と呼ばれる現象が発生し、ビームが楕円化するため作用長が制限される場合があります。

擬似位相整合法

一般的に位相整合がとれていない場合には、基本波光と発生した波長変換光の間で位相速度に差があるために、基本波が結晶内を伝播するにつれて次々と発生する波長変換光は、少しずつ位相がずれて発生します。発生した波長変換光は、各々が加算されて徐々に強度が増しますが、ある距離lc離れた2点で発生した波長変換光の位相差がπになると、互いに打ち消し合うようになり逆に強度が減衰していきます。その結果、波長変換光の強度は図2の点線で示すように周期的に強弱を繰り返すようになります。

擬似位相整合による波長変換
図2.擬似位相整合による波長変換

この距離lcはコヒーレント長と呼ばれています。安定して強度を増大させる方法として、互いに打ち消し合うフェーズにおいて、結晶の分極を反転させてこのフェーズで発生する波長変換光の位相を反転させることが考案されました。この方法によると、本来なら互いに打ち消し合うフェーズでも逆に強めあうフェーズに移行でき、実線で示すように強度を常に増加させることができます。このように周期分極反転により擬似的に位相整合させる波長変換方法を擬似位相整合法と呼びます。

擬似位相整合(QPM)型の波長変換素子の概要を図3に示します。

QPM型波長変換素子の概要(例:第二高調波発生用)
図3.QPM型波長変換素子の概要(例:第二高調波発生用)

QPMデバイス内には、図3に示したように結晶の分極を周期的に反転させた周期分極反転構造が形成されています。擬似位相整合の原理から分るように、分極反転の周期は、分極の正負の領域を一対としてコヒーレント長の2倍の長さになります。

QPMデバイスの大きな特徴の一つとして、分極反転周期を調整することで、対応波長や変換方法(高調波発生、光パラメトリック発振等)をカスタマイズすることができます。例えば第二高調波発生用デバイスでは、その分極反転周期Λは式(1)のように表せます。

分極反転周期の式

式(1)に示すように分極反転周期は、入射する基本波波長によって決まります。つまり、この周期を適切に設計することで様々な波長に対応したデバイスを作製することができます2)

また、QPMデバイスは分極反転構造を形成する方位を選ぶことで、従来の複屈折位相整合では実現できなかった方位の高い非線形定数を利用でき、結晶本来の非線形特性を十分に活用した効率の良い波長変換が可能になります。このように、QPM技術を用いることにより、様々な波長に対応した高効率の波長変換が実現できます。

QPMデバイスの材料には、単一分極化された強誘電体基板が用いられています。

1990年代初頭には、コングレント組成のニオブ酸リチウム(CLN)やタンタル酸リチウム(CLT)が使用されていました。その後、MgOをドープしたLN,LT結晶(MgO:LN,MgO:LT)や定比組成のLN(SLN)やLT(SLT)、MgOをドープしたSLN(MgO:SLN)やSLT(MgO:SLT)結晶、さらにKTP結晶などもQPMデバイスに利用されています。その中でも、フォトリフラクティブ耐性が強いMgO:LNやMgO:SLTが大きな注目を集めています。

これらの結晶は非常に大きな非線形定数を有しています。QPM技術を用いることにより、従来の複屈折位相整合では利用できなかったこの高い非線形定数を活用し、高い波長変換効率を得ることができます。

最近は、ディスプレイ用の光源に利用されるグレーンレーザの第二高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)用波長変換デバイスとしてQPMデバイスが注目されています。また、和周波発生(Sum Frequency Generation :SFG)や差周波発生(Difference Frequency Generation :DFG)、光パラメトリック発振(Optical Parametric Oscillation :OPO)といった2次の非線形性を利用した様々な波長変換も幅広く利用されています。

QPMデバイスは、その特徴的な周期分極反転構造(Periodically Poled structure)を有することからPP-XXとも呼ばれており(XXは材料名がはいる)、PPLN、PPMgLN、PPMgSLTのように表現されます。

1)屈折率分散:

屈折率の波長依存性のこと。一般に短波長になるほど屈折率が高くなる。よって、波長の異なる光が結晶内を伝播するとき、それぞれ光の位相速度に差が生じる

2) 結晶の透明波長領域に限る。

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