人事担当役員メッセージ

人財の価値向上のため、社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出す

私は1991年に当社に入社しました。経営戦略や営業、子会社への出向などの経験を積んできましたが、最も長く携わって来たのは人事業務です。人事部門に所属していた時期の後半には、部長研修の立ち上げや選抜型研修の再開などの人財育成の制度改革や、また、当社の健康経営の一環として健康管理ツールの導入なども行いました。
今回、人事担当役員に就任するにあたり、「人財の価値向上が企業の持続的な成長に不可欠である」という考えは変わりません。私のミッションは、社員一人ひとりの潜在能力を最大限に引き出すための環境整備と、組織文化の変革を進めることです。人財の価値向上を実現し、企業の成長に貢献することを目指して、これからも努力を重ねていきます。

エンゲージメント調査から見える課題と施策

当社のエンゲージメントスコアは、国内製造業の平均をやや上回っています。特徴としては、自社への誇りは高い一方で、達成感や貢献意欲がやや低い傾向にあります。一方で、従業員一人ひとりのモチベーションは高いことが確認されています。これは、目標を達成したと思いつつも、それができない場合や、貢献したいと考えても思い通りに行動できない状況があることを示唆しており、組織文化や制度に改善の余地があると考えています。そのため、中期経営計画では、人事制度の改革を通じて従業員の強みを最大限に活かす取り組みを進めるとともに、組織開発やグループ人事・人財マネジメントの支援を通じて組織風土の変革に取り組みます。また、当社グループの売上高の50%以上が海外であり、従業員の約40%である約6,000名が海外に在籍しています。しかしながら、海外を含む事業の推進・発展を支えるための人財マネジメントのシステムは未だ構築途上にあります。各地域と協働し、人事のグローバル化を進めることで、この課題に対処していきます。

人事制度と組織変革

現在、挑戦を促す人事制度の変革を進めています。新たな人事制度の導入に加えて、従業員がその力を最大限に発揮できる環境・機会・教育の提供が不可欠であることを認識しています。人というのは感情を持っているので、単なる制度や仕組みだけでは行動を促すことが難しいと考えています。そのために経営戦略と人財戦略を同期させ、従業員が生き生きと働き、自身のキャリアパスを描けるような改革を推進していきます。同時に、自律的な成長を促すための環境と機会を積極的に提供して行きたいです。最適なチーム構成は1チームにつき4-6人と言われています。この人数を超えたり下回ったりするとパフォーマンスは低下すると言われています。現状、組織の規模が大きいために、業務が細分化され、個々の裁量が制限されている場合があり、それがイノベーションの妨げとなっている可能性も考えられます。組織のあり方も含めて見直し、よりイノベーションを促進する環境を整えることにも取り組みたいと考えています。

4つの施策で人財育成を推進

人財育成に関しては、四つの施策を実施します。まず、当社の次世代の経営者・リーダーを計画的かつ継続的に開発するプログラムを展開します。次に、経営環境の急速な変化に対応するため、DXやグリーン等の当社が取り込むべきスキル・専門性を高めるリスキリング・学び直しの機会を提供するということ、また高度専門人財の育成に取り組みます。三番目に、管理職の組織運営力を向上させるため、傾聴、コーチング、フィードバックなどのスキルの取得を通して、多様な人財を活かす意識を高めます。最後に、当社の社是・経営理念・グループサステナビリティ憲章に共感し、島津グループが求める人財像を理解するための研修(Leadership&Diversity研修)も行います。
研修は、業務に直結する知識、スキル、ノウハウ習得に留まりますが、同時に、専門分野に留まらず、幅広い知識を身に付けることで、人間性を豊かにし、人間としての幅や仕事の幅を拡げて行ってほしいですし、倫理観の涵養(かんよう)や、社会課題への関心が高い社員も増やしていきたいです。環境が整えば、このような機会を提供したいと考えています。

多様性を持ち、周囲に影響を及ぼす人財を多く輩出する企業へ

当社では、技術部門と販売部門にはカラーの違いはありますが、基本的にはまじめでコツコツと努力を積み重ねる人が多いと認識しています。ただ、会社には多様性が不可欠です。たとえば、大きな戦略を描くことが得意な人や、地道に業務を積み上げる人、フォローアップに長けた人など、様々な性格や能力を持つ人財で構成された組織は、危機への対応力が高まり、よりレジリエントな姿勢を示すことができます。
そのため採用プロセスでは、インターンシップの充実や大学との連携を通じた採用なども取り入れ、多様な方法で高い専門性や多様な経験を持つ人財を獲得する努力を行っています。すでに、大阪大学と修士課程を修了した学生を社員として採用し、博士後期課程での研究を継続する取り組みを進めていますが、この取り組みを広げていきます。また、若手社員には海外グループ会社に派遣する現場研修の実施など、若手に機会を与える研修を拡大し、海外での経験を元にして組織文化を変えていける人財を増やしていきたいと考えています。実際に別の部署や海外で培った新たな視点を持つ社員が、その後の異動先で、新しい文化を還流するという好事例も多く生まれています。このように、知識・経験を獲得するだけではなく、これらを活用して周囲に影響を与えることができる人財の育成を目指しています。

イノベーションをリードする人財を創出する島津にご期待ください

2023年度-2025年度の中期経営計画では、当社が事業を展開していく領域として、4つの社会価値創生領域を定めました。これは、従来の事業部門の垣根を越えて、新たな事業展開を推進する事を意味します。事業部制では、しばしば縦割りの意識がどうしても生じてしまい、イノベーションを阻害する要因となることがあります。しかし、組織の構造を変えるだけでは、問題解決にはつながりません。その変革を支えるのは、人事制度や新しい事へ挑戦するための意識改革、そして、その基盤となる多様性の尊重です。これらが揃って初めてイノベーションの創出が加速されます。
今後も、多様なパートナーと協力し、社会課題解決に向けたイノベーションをリードする人財を創出するための人事戦略を実行し、企業価値の向上を目指してまいります。どうぞご期待ください。

常務執行役員
人事・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 青山 恵則

略歴

1991年 4月   当社入社
2012年10月   人事部 担当部長
2013年 1月   人事部 人材開発室長
2016年10月   人事部 副部長
2017年 4月   人事部長
2020年 4月   執行役員 総務部長
2022年 4月   常務執行役員 法務・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当
2024年 4月   常務執行役員 人事・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当(現在に至る)